TPP参加による医療・くすり・厚生行政への影響

  現在話題になっているTTP参加問題ですが、十分理解ができないことから、ここのところさまざまな情報にアクセスしています。

 日薬は2日、日医などともに記者会見を行い、下記のような情報を発信していますが、これだけでは、TTP参入でなぜ「混合診療」や「医薬品」など医療領域に影響が及ぶのかよくわかりません。

三師会、合同でTPP参加問題に関し記者会見
(日本薬剤師会 2011.11.04)
http://www.nichiyaku.or.jp/action/?p=13834

 そこで、いないろなWEB記事をあたってみたところ、下記の記事が、医療領域とTPPについてわかりやすく書いてありました。

 特に、2ページ目に書かれている「TPPの問題の本質は関税ではありません。また、TPPが撤廃する障壁はサービスには、金融や医療も含まれますし、その他の貿易障壁には食料安全基準に加えて、法律などの制度も含まれます。」ということを私たちは認識しておく必要があります。

TPP参加でアメリカの医療保険会社が我が国の医療に乱入し、国民皆保険制度と日本人の健康が崩壊する
(宮武嶺 BLOGOS 2011.11.03)
http://news.livedoor.com/article/detail/5993367/

 上記の韓国での問題は、TPPを考える国民会議(http://tpp.main.jp/home/)で医療関係者からのヒアリングを行った、10月12日の第7回TPPを慎重に考える会勉強会でも指摘されています。

第7回TPPを慎重に考える会勉強会(→議事録動画1

 また、TOPICS 2011.11.08 でとりあげたニュージーランド・ オークランド大学ジェーン・ケルシー教授が7月13日に札幌で行った講演(→議事録動画)では、すでにTPPに参加している自国の状況について次のように語っています。

「今、ニュージーランドで問題となっているのは、医薬品を政府によって安く入手できる仕組みになっているのですけれども、それを担っている機関の将来がどうなるかということです。このような制度があるからこそ、わが国の公衆衛生制度では安い医薬品を国民に提供することができています。しかし、アメリカの製薬会社は、アメリカの企業が決める価格でニュージーランドで販売したい強い要望を持っています。これは、本来、貿易協定の交渉であったにもかかわらず、ニュージーランドにおいては、わが国の医療制度、公衆衛生制度の将来についての議論まで広がってしまったわけであります。」(上記議事録より引用)

 つまり、TPP参加により、自国の医療制度や厚生行政などまでが世界基準の名のもとに変えられてしまうことが懸念されるのです。(この基準をどこに置くがが話し合いになるかもしれませんが、米国のスタンダードが要求されることは容易に想像できますね)

 さっそく8日、TPP参加で日本に医薬品の規制改革が求められるとした報道があります。

米国、TPPで医薬品改革を要求 販路拡大狙う
(47NEWS 2011.11.08 共同通信配信)
http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011110801000909.html

「医薬品へのアクセスの拡大のためのTPP 貿易目標」
(本年9 月12 日米通商代表部(USTR)公表)
(公表文書中の個別項目(仮訳))
(外務省 平成23年11月)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp02_01.pdf

原文は米国通商代表部のウェブサイトの下記ページにあります。

Trade Enhancing Access to Medicines
(USTR Press Release 2011.09.12)
http://www.ustr.gov/about-us/press-office/
press-releases/2011/september/trade-enhancing-access-medicines

上記原文(→Google 翻訳
TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP TRADE GOALS TO ENHANCE ACCESS TO MEDICINES
http://www.ustr.gov/webfm_send/3059

 (追記)
  上記については、別記事をたてました。
  TOPICS 2011.11.09 医薬品へのアクセスの拡大のためのTPP貿易目標

 ジェネリック医薬品の供給の遅れについては、開発途上国や紛争地域に医師を派遣する国境なき医師団でも懸念を示しています。

TPP:知的財産権保護でジェネリック薬の供給が脅かされる恐れ――TPPが途上国向け医薬品の供給に及ぼす影響について、MSFは日本政府に考慮を要請
(国境なき医師団日本 2011.11.07)
http://www.msf.or.jp/news/2011/11/5363.php

 海外でもTTP関連のサイトがあり、医療分野への影響を記したページもありますが、現時点ではまだまだ十分理解できていません。

 ただ、いずれにしても、TPP参加問題は単に関税撤廃で輸出がしやすくなる、安い輸入品が手に入るということだけではなく、私たちが関わる分野でもさまざまな影響をもたらすことは間違いないようです。

 私たちも関心を持って、今後の議論や推移に注視する必要があるでしょう。(誤り、誤解釈等がありましたら、ご指摘下さい。また、この記事は更新する場合があります。)

関連情報:TOPICS 2011.11.08 たばこ包装への警告写真義務化に待った(米国)


2011年11月09日 01:30 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連記事が、薬害オンブズパースン会議の注目情報に掲載されています。

    リークされたTPP文書により米国が各国の医薬品供給システムの土台を崩すことが露呈
    (薬害オンブズパースン会議 注目情報 2011.11.22)
    http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=342

  2. アポネット 小嶋

    日医は11月30日付けでTPP交渉参加に対する見解を明らかにしています。

    TPP交渉参加に対する日本医師会の見解
    -TPP 交渉参加表明に関連して-
    (日本医師会2011年11月30日)
    全 文:http://dl.med.or.jp/dl-med/nichikara/tpp/TPP_20111130_word.pdf
    概要版:http://dl.med.or.jp/dl-med/nichikara/tpp/TPP_20111130_PPT.pdf