医薬品ネット販売規制は適法(東京地裁判決)

 30日、去年5月にケンコーコムとウェルネットの2社が医薬品のネット販売を行う権利の確認および省令の無効確認または取り消しを求めた行政訴訟の判決が行われ、両社の請求を退ける判決を言い渡しました。

 両社は、一般用医薬品のインターネット販売について、『これに起因した問題や事件が存在しないにもかかわらず、明確な理由のないまま「販売そのもの」を禁止するような規制は、法律的な見地からみても、行き過ぎた過度の規制であり、営業の自由を保障した憲法に違反している。また、これを省令で定めること自体も違憲である』として、医薬品ネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消請求を東京地裁に行い、審理が行われていました。

 岩井伸晃裁判長は、「省令は訴訟の対象となる行政処分には当たらず、医薬品の副作用被害の防止などを達成するための手段として合理性を認めることができる」との合憲判断を示す一方、「将来において、医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む)及び通信情報技術等をめぐる本邦の状況に有意な変更の事情が生じた場合には、一般用医薬品の副作用の危険性に応じた区分及びその区分に応じた規制内容(郵便等販売に関する経過措置の追加を含む)の見直しが図られることが新薬事法の趣旨にも合致するものと解される」として、今回の規制が恒久的に固定化されるべきではないと付言し、柔軟に規制を見直すよう促しています。

 ケンコーコムでは、判決要旨をHPで公開しています。

ケンコーコム、医薬品ネット販売規制訴訟「判決要旨」を公開
(ケンコーコムプレスリリース3月30日)
http://www.kenko.com/company/pr/archives/2010/03/post_81.html
http://blog.kenko.com/pr/files/20100330Kenko.com_judgement.pdf

 ケンコーコムでは判決について、「被告である国のみならず、司法までもが当社の期待に反し、一部の業界団体と手を組んだ官僚が、これら団体の利益のみを合理的根拠なく優先した到底納得しがたい官僚主導の省令を、適正と見なしたことについて、誠に遺憾に思います。当社は本件が悪しき前例となり、今後も国はおろか司法までもが官僚の暴走を留める努力を怠り、果たすべき役割を放棄し続けることを強く懸念します。」などとしたコメントを発表し、控訴の手続きに入ったことを明らかにしてます。

ケンコーコム、医薬品ネット販売規制裁判の判決結果(敗訴)について、コメントを発表
(ケンコーコムプレスリリース3月30日)
http://www.kenko.com/company/pr/archives/2010/03/post_82.html

 ケンコーコムは今月24日、日本外国特派員協会で英語でスピーチを行い、今回の規制について官僚との癒着が背景にあると厳しく批判していました。

What’s this about? Abuse of bureaucratic power
(ケンコーコムプレスリリース 3月24日)
http://www.kenko.com/company/pr/archives/2010/03/our_struggle_to_ensure_fair_pl.html

ケンコーコム、日本外国特派員協会での会見を聞いてきました
(Dh Memoranda 3月26日)
http://uva.jp/dh/mt/archives/005223.html

関連情報:TOPICS
 2009.05.25 ネット販売規制は違憲、ケンコーコムなどが提訴
 2009.07.15 医薬品のネット販売規制訴訟の初公判が開かれる
 2009.10.23 医薬品のネット販売規制訴訟、年内に結審へ

参考:
【東京地裁】医薬品ネット販売規制は「適法」‐省令無効の請求を棄却
(薬事日報 HEADLINE NEWS 4月1日)
http://www.yakuji.co.jp/entry18706.html
薬ネット販売規制「適法」 東京地裁、将来の見直しに言及
(47NEWS 3月30日 共同通信配信)
 http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010033001000762.html
時事通信3月30日
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010033000656
読売新聞3月30日
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100330-OYT1T00699.htm
ケンコーコムの医薬品ネット販売規制に関する裁判、本日判決
(ケンコーコムプレスリリース3月30日 News2U.net)
 http://www.news2u.net/releases/66931
 

3月30日16:15 16:45 18:10更新 4月1日 リンク追加


2010年03月30日 15:30 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    りンク追加しました。

    記者会見とブログで後藤玄利氏は怒りをぶつけています。

    ケンコーコム後藤氏、ネット販売規制合憲に「極めて不当な判決」「最後まで闘う」
    (CNET JAPAN 3月31日)
    http://japan.cnet.com/sp/drag/story/0,3800097284,20411161,00.htm

    一審敗訴を受けて(健康とECのBlog 3月30日)
    http://www.kenko.com/blog/genri/2010/03/blog-post_30.html

    医薬品ネット販売規制は「合憲」
    (医療介護CBニュース3月30日)
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26998.html

    医薬品ネット販売規制の行政訴訟で原告側が敗訴
    (健康美容EXPO 3月30日)
    http://news.e-expo.net/news/2010/03/post-153.html

    医薬品通販規制に対する行政訴訟、「省令は合憲」として訴え棄却
    (Internet WATCH 3月30日)
    http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100330_357945.html

    確かに、判決は厚労省の主張を全面的に受け入れている形にはなっていますが、私は判決要旨の次の部分を注目しました。(6ページ中段)

    ———————————————

    一般用医薬品の副作用による健康被害は重大な結果を伴うもの(死亡事例など)を含めて現に多数生じており、その中には薬剤師等から十分な情報提供が行われていれば防止することが可能であったものが相当数含まれていること

    他方、消費者一般に一般用医薬品の副作用の危険性に関する意識・認識が十分でない傾向が我が国の現在の実情であるとされており、現に、一般用医薬品の副作用による薬害患者には添付文書を読まずに服用して発症した者も多いことや薬店で売っているからそれほど強い薬ではないだろうと思っていた者がいることに加え、一般用医薬品の添付文書についてわかりにくいとの意見が少ないこと

    消費者の間には一般用医薬品の薬局又は外箱の注意書き等の単なる一方的な書面等によるのでは内容・趣旨が十分に伝わらないことが多く、説明の実効性に限界があるといった実情があり・・・

    ———————————————

    私は、今回請求が棄却された背景には、裁判長が情報の提供方法について、どちらがよいというのではなく、情報を受けとめる側の消費者が、どれだけ一般用医薬品の副作用に対する意識や認識を持っているかということに懸念を持ち、消費者の自己責任でネット販売を認めることは時期尚早ではないかと判断したのではないかと思います。

    関連情報:TOPICS
     2009.06.12 OTC選択で薬剤師の助言は消費者に重視されているか(ニールセン調査)
     2008.10.11 風邪薬販売時に薬剤師からの情報提供は必要とされていない?

    実際、判決要旨での付言(13ページ)にもあるように、裁判長は省令による規制が恒久的に固定化されるべきではないとしているように、消費者の意識(くすりは必要な人が、必要なときだけ、副作用に気をつけながら必要最小限使用する)と、販売する側の意識(消費を煽るような陳列や過度の期待をもたせる販売方法、消費者の選択の名の下に行われるセルフ販売)が変われば、ネット販売は認められる方向になるのではないかと思います。

    さて、裁判は控訴となるようですが、それよりも前に行政刷新会議でこの問題が取り上げられます。

    ポピュリズムの新政権ですから、「仕分け」で、省令廃止なんてことになるんじゃないかと思っています。

    第1回 規制・制度改革に関する分科会
    (行政刷新会議 3月29日)
    http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/0329/agenda.html

    資料2-2 検討テーマ各項目
    http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/0329/item10_01_03.pdf

    今度はこちらの方が目を離せませんね。

    「消費者、患者の観点で規制見直しを」-行政刷新会議分科会が初会合
    (医療介護CBニュース 3月29日)
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26981.html

    関連ブログ:
    医薬品ネット販売訴訟 判決は「棄却」
    (薬局のオモテとウラ 3月29日)
    http://blog.kumagaip.jp/article/36765915.html
    医薬品ネット販売規制は「合憲」 ケンコーコムの訴え却下
    (医薬品・化粧品・食品に関する情報提供 3月31日)
    http://yakuji.exblog.jp/10917370/

  2. アポネット 小嶋

    ケンコーコムは5日、判決後の記者会見の様子をYouTubeにアップしています。

    ケンコーコム他医薬品ネット販売規制裁判判決会見 司法記者クラブ
    (1) http://www.youtube.com/watch?v=Cpwifz0PIDs
    (2) http://www.youtube.com/watch?v=kk4Rl26ixU0&NR=1
    (3) http://www.youtube.com/watch?v=s4VVn4qlSrQ&NR=1