チーム医療における薬剤師の役割

 医師と看護師等との協働・連携のあり方等について検討を行うために設置された、「チーム医療の推進に関する検討会」の第9回検討会が21日に開催され、論点の整理が行われています。

第9回チーム医療の推進に関する検討会(2010年1月21日開催)
  資料:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/s0121-4.html
 議事録:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/txt/s0121-8.txt

 事務局がまとめた論点の整理案(→資料1)によれば、薬剤師については、「その他のメディカルスタッフの役割の拡大」項目で、次のような論点が整理されています。

  • 医療安全の確保、医師・看護師の薬剤管理等に関する業務負担の軽減の観点から、薬剤の専門家である薬剤師の活用は非常に有益との指摘がある一方、病棟等において十分に活用されていないとの指摘もある。
  • このような状況を踏まえ、チーム医療の観点から、例えば、どういった業務を実施することが有益か。また、薬剤師の活用の促進に向けた具体策について、どのように考えるか。
  • さらに、平成18年度から薬学教育6年制が導入されているが、今後、薬剤師が担い得る役割についてどのように考えるか。

 一方、日薬の山本信夫委員は、「チーム医療において薬剤師が行う業務について」という資料(→参考資料2)を提出し、現行法の範囲でも下記のような業務(既に実施されている業務を含む)が可能だとしています。
(入院患者を対象にする場合であっても、在宅医療を受けている患者の場合であっても、医師をはじめ治療チームのなかで十分な意思疎通が行われていることを前提とする。)

  1. 医師の処方せんに基づく調剤にとどまらず、薬物療法を受けている患者(在宅患者を含む)の薬学的管理を行い、処方内容や薬剤服用中の患者の経過・状態などを確認し、必要な場合に医師への疑義照会を行うこと
  2. 医師への疑義照会の一環として、薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について積極的に処方の提案を行うこと
  3. 患者の薬物療法と薬剤管理に関する業務全般に、責任を持って関与すること。とりわけ、薬物の血中濃度の測定・解析や副作用のモニタリングを行うことにより、患者の薬剤による副作用防止と有効性の確認を行い、医師や看護師など他のチーム医療のメンバーと情報の共有化を行うこと
  4. 入院患者について、持参薬のチェックと管理を行うとともに、持参薬を含めた服薬計画を医師に提案すること
  5. 薬物療法を受けている患者(在宅患者を含む)に対し、疼痛緩和のための医療用麻薬を含む全ての医薬品・医療材料を、適切に供給するとともに、必要な情報提供や服薬指導を行うこと
  6. 外来化学療法において、患者の状態に基づき、投与薬剤の妥当性を医師等と協議するとともに、インフォームドコンセントへの参画、及び薬学的管理(患者の副作用状況の把握と支持療法の提案、服薬指導等)を実施すること
  7. 定期的に薬物療法の経過の観察や副作用発現の確認等を行うために、薬剤師が医師の指示した処方期間内で分割して調剤すること
  8. 薬剤師が、抗がん剤を安全キャビネット内で適切な器具を用いて無菌調製することで、医師や看護師の抗がん剤からの被曝による健康被害を防止すること
  9. 薬物療法の経過等を確認した上で、前回処方と同一内容の処方で差し支えない旨を医師に提案することにより、患者に対し迅速な調剤を実施すること
  10. 医師や薬剤師等で事前に作成・合意された標準的な薬物療法手順書や患者個別の薬物治療計画書に従い、医師・看護師等と協働して、薬剤の投与量や投与方法、投与期間を予め定められた範囲(上限・下限)内で変更すること
  11. 患者個別の薬物治療計画書に従い、医師が予め薬剤の種類の変更やその条件を明示した処方を行っていた場合には、医師・看護師等と協働してその条件下で薬剤の変更を行うこと
  12. 患者個別の薬物治療計画書に従い、薬剤の血中濃度検査オーダーの実行時期を薬剤師の判断に委ねて予めオーダーを行っている場合には、医師・看護師等と協働してそれを実施すること

 また、今後「専門薬剤師」「認定薬剤師」など、高度な知識・技能を有する薬剤師が増加して、平成24年度以降に新教育制度で学んだ薬剤師が医療現場に進出してくれば、将来的には次のような業務も可能だとしています。

  • 現行では医師への疑義照会の後、医師の了解のもとで行 われている患者の希望に応じた剤形の選択や薬剤の一包化等については、医師への 報告を条件に薬剤師の責任下で可能としたい。
  • 医師の負担軽減に繋がり、今後、長期にわたる投薬や在宅治療を継続して いる患者に対しての利用が期待されているリフィル処方せんに基づく調剤についても、導入されたい。
  • 個々の患者の状況に適した安全な薬物療法を提供する観点から、薬剤師が 薬物療法に主体的に関わることが望まれる。そのために、例えば、薬物の血中濃度の測定・解析のために必要な採血を行うことや、検査のオーダー等を、薬剤師がチ ームの一員として行っていくことを要望する。
  • 米国の大多数の州で導入されているCDTM(Collaborative Drug Therapy Management:医師が診断し、最初の薬物療法に係る判断を行い、その後一定の条件 下で医師が承認した「薬剤師が患者ケアのために行う業務を規定したプロトコール」 に基づき、薬剤師が薬物療法のマネジメントを行うこと)のように、薬剤師が患者の服用状況や副作用・効果の発現状況等を確認(モニター) し、その記録に基づき患者にとって安全な薬物治療を継続し、医薬品の適正使用に 努めることも広義の疑義照会と捉え、基本的な処方設計を除いては、事前のプロトコールに従って薬剤師の責任の下、医師への報告を条件に、処方せんに記載された指示内容を変更し、調剤・投薬および服薬指導等を行う
  • これら体制を導入するため、現在の6年制課程での薬学教育に加え、高度な専門領域の教育・研修が必要と考えられ、より専門性の高い薬剤師養成 の仕組みの構築が不可欠であり、こうした体制を整備するための制度・財政両面からの支援も必要である。

 資料では、 「薬剤師がチーム医療の中で、薬の専門家として一層貢献できるよう、業務の拡大と活用を図って頂きたい」と記されており、現時点での日薬・日病薬が考える「チーム医療における薬剤師の役割」を総括したものと考えてよいでしょう。薬学4年制で学んだ私たちにとっては、さらなる研鑽が求められます。

 今後、これまでのヒアリングや他団体からの要望(→参考資料1)を踏まえ、報告書としてまとめられますが、果たして薬剤師の役割(分担)がどこまで記されることでしょう。

関連情報:TOPICS
  2010.01.08 チーム医療の推進に関する検討会(続報)
  2009.10.04 第3回チーム医療の推進に関する検討会
  2009.08.24 28日、チーム医療の推進に関する検討会が開催
  2009.08.29 第1回チーム医療の推進に関する検討会
  2009.01.07 専門薬剤師 vs 専門看護師
  2008.09.22 看護師による薬剤の処方は有用(日本学術会議提言)
  2008.09.17 専門薬剤師の必要性と今後の発展(日本学術会議提言)
  2008.04.05 薬剤師はさらなる役割を担うべき(英国)

関連記事:医療介護CBニュース(2010年1月21日 一定期間を過ぎるとログイン必要)
       http://www.cabrain.net/news/article/newsId/26011.html

2月17日 リンク追加 


2010年01月22日 21:07 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    2月17日に議事録が掲載されました。(本記事でリンク)

    山本信夫委員は冒頭以下のように発言しています。

    >チーム医療において薬剤師はどのようなことを行っているのかということ
    >について、これまで何度か発言をしてまいりました。座長の永井先生か
    >らも、やれること、これからやることを少し整理したらどうかというご意見
    >を頂戴したがありましたので、参考資料2にまとめました。

    第3回の検討会で、虎の門病院薬剤部長の林昌洋氏がプレゼンテーションはしていますが、座長から言われなかったら、日薬としてこういった資料を出す予定はなかったということ?