生活者からの副作用自発報告システムは日本でも必要(国内研究)

 TOPICS 2009.01.10 で、副作用情報収集のためには、患者さんによる直接報告も有用との記事を紹介しましたが、日本でも薬学研究者がOTCを対象に生活者からの副作用自発報報告システムができないかの模索を始めています。

一般用医薬品による副作用の生活者からの自発報告システムの開発
(財団法人一般用医薬品セルフメディケーション財団 平成20年度調査研究報告書)
 http://www.otc-spf.jp/symposium/pdf/b_05.pdf

 この研究は、日本でも医薬品の適正使用の推進に資するためには、海外で行われている生活者からの副作用自発報告システムの導入が日本でも必要はないかと考え、慶応大の望月眞弓教授らの研究グループが行ったものです。

 研究者らはまず国内外の副作用報告の書式を参考に「副作用報告シート(案)」を作成、『OTC風邪薬で胃痛が生じた』というシナリオをつくって、これを慶応大薬学部OSCEトライアルに参加した模擬患者(SP)32名に対し、シート記載内容や報告を行うことについての意見についてのアンケート調査を行いました。

 その結果、報告シートの内容に一部改善が必要との意見が寄せられましたが、国に直接副作用報告するシステムをつくることについては概ね賛成のようでした。

 また、記述意見としてやはり個人情報の管理についての懸念が寄せられていて、薬局で行うのではなく、郵送や第三者機関で行って欲しいとの意見も示されています。英国のオンラインによるイエローカード副作用報告システム(http://yellowcard.mhra.gov.uk/)のような仕組みについての検討も必要かもしれません。(PMDAで検討しているのかな?)

 なお、この研究はシートを改良して、今度は実際に薬店でOTC薬を購入した生活者を対象にアンケート調査が実施されているとのことです。結果報告を期待したいですね。

関連情報:TOPICS
 2009.01.10 患者副作用直接報告は、医療専門職からの報告を補完する
 2008.02.19 イエローカードオンライン副作用報告システムが本稼動(英国)
 2007.04.07 Adverse Medicine Events Line(豪州)
 2007.03.17 眠剤服用後の異常行動に注意喚起(米FDA)
 2006.11.10 ドパミン作用薬と病的賭博・性欲亢進(英国レポート)


2009年10月25日 13:10 投稿

コメントが5つあります

  1. ようやく、ほんとに ようやく 副作用被害情報を集めることが 可能になってきました。消費者個々人が 個別に対処するしかなかったことに 専門家集団が真面目に情報収集をする気になったと思います。
    先日も どんな状態でこの薬剤を止めるのか?という質問に 根拠となるデータを示せなかったメーカー。それぞれの担当医の思惑と患者の金銭的な訴えで止めることになるだろうという 不遜な回答でした。副作用報告に対しても 何でも報告されると記載しなければならないのでというエクスキューズばかりが目立ちます。
    きちんとしたデータとその解析を求めていくのが 社会貢献に繋がると思います。

  2. アポネット 小嶋

    こういった取り組みは現場が必要性を感じて、訴えないとなかなかすすまないですよね。

    薬剤師による報告も敷居が高いと思います。(既に取り組まれている方には失礼かもしれませんが)

    現場で副作用かなと思っても、やはり患者背景が十分でないことや、実際にどのような治療が行われているかがわからないために、どうしても報告には躊躇するかと思います。

    厚労省から現場の薬剤師からの報告が少ないとの指摘がありますが、「医師やメーカーに気兼ねすることなく、患者背景などが十分わからなくても、どしどし報告して欲しい」ともっとアピールしたり、日常業務の中で効率的に報告ができる仕組みも必要ですよね。

    まだまだ時間がかかるでしょうが、大学が中心ととなって具体化に向けての動きが始っていることに、私たちももっと関心を持つ必要があるでしょう。

  3. アポネット 小嶋

    こういった研究は、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」第一次提言への対応として、厚生労働科学研究(平成21年度〜23年度)としても行われていくようです。

    第17回薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会
    (2009年10月29日開催 資料11月2日WAM NET 掲載)
     資料5:「第一次提言に関する対応状況」についての委員からの意見への対応

    研究課題名は、「患者から副作用情報を受ける方策に関する調査研究」で、研究は「患者からの副作用報告に関する国内外の実情調査等を行うとともに、報告様式やデータベース化・解析方法等を検討することにより、患者からの副作用報告を効果的・効率的に収集し、得られた情報を蓄積・活用する方法について研究する。」という内容だそうです。

    今年の5月14日に第1回班会議が開催され、現在、各分担研究者により「患者が副作用報告する際に報告内容の正確性を増すために役に立つ情報内容」「Webによる収集システムの開発」「患者の表現する副作用用語の辞書化」等の研究が進められているとのことです。

    医療用医薬品についてもおそらく検討がすすめられるものと思われます。

    関連情報:TOPICS 2009.05.07 薬害防止のための医薬品行政のあり方第一次提言

  4. 現在は患者が副作用かなと考えられる事象を直接企業に報告する制度が確立しています。この新しい「制度」は2005年に通知の形で厚労省により各都道府県に配布されています。これは「通知」であるので、理論的にはそれに準じることが求められているだけで、このような通知の内容は企業は全く広報をしていません。したがってそのような可能性があることは多くの人が認識していない。
    このような環境下ではまずどのような報告用紙を作成するかという基本作業が必要なので、このような観点から今回のこのような研究は必要であり、できるだけ早く患者用の報告用紙を作成すべきでしょう。

  5. アポネット 小嶋

    >鈴木様 情報ありがとうございます。

    この通知の名前がわかれば教えて頂けますか?