指定第二類医薬品の指定は再検討すべき(省令案パブリックコメント)

 パブリックコメント提出用に問題点を整理してみました。再度内容を検討して、近く提出する予定です。
(個人的な見解であり、アポネット研究会としての見解をまとめたのではありません)

全般的な意見
(意見内容)
指定第二類への指定は一般用医薬品の特性にも十分留意すべきである。
(理由)
  • 一般用医薬品は通常、専門家による情報提供を行い販売されるが、消費者の自己判断が購入・使用されることも少なくない。一般用医薬品の使用のあり方について、くすり教育や一般国民への啓蒙がまた十分でない現状を考えると、用法・用量が守られなかったり、セルフケアの枠を超えて安易な連用が行われるリスクがある。
  • また、わが国では大包装品が競うように販売され、意図的な過量服用(例:アセトアミノフェン含有製剤の自殺目的の使用、やせ目的での下剤の濫用)も可能とするリスクがある。
  • 英国など海外では、利便性などを考慮して小包装のものは自由販売を認める一方で、大包装のものはリスクを考慮してオーバー・ザ・カウンターでの販売の義務付けるなど、成分だけではなく包装数によるリスク分類も行われているが、わが国ではリスク分類にはそのような考え方がない。
  • 一方、日本での報告は少ないが、米国などでは若者を中心に気晴らし目的に大衆薬を治療や症状軽減の目的以外に使用する場合がある。また、これらの情報についても国内外のサイトからインターネットで容易に入手できる状況にある。
  • 米国では、近年、依存性や中毒性のある成分が含まれるOTC薬について、若者の濫用、商品の万引きの事件など大きな社会問題が生じていて、近年これらの成分を含むOTC薬の販売方法や陳列方法を見直す動きも出てきている。日本でも、こういったリスクを過小評価し、容易にOTC薬の入手できる仕組みにした場合には、近い将来米国と同じような社会問題を生み出す懸念がある。
  • よって、指定第二類については、自己判断による過剰な使用、目的外の意図的な使用など、専門家が想定しない使用法が行われる可能性も十分に留意して、指定が行われるべきである。
指定成分名についての意見
(意見内容)
アリメマジン、カルビノキサミン、クレマスチン、クロルフェニラミン(内服)、ジフェニルピラリン(鎮静作用のある抗ヒスタミン薬)の水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤は、指定第二類に指定すべきである。
(理由)
  • 昨年来、海外ではこれら鎮静作用のある抗ヒスタミン薬を含有する小児向けOTC薬について、有効性が明らかでなく、また過量服用による有害事象が少なくないとして、2歳未満に使用しないことを求める動きが各国に広がっている。
  • また米国FDAではこれに続き、2008年10月2日にヒアリングが行われ、小児科医の団体、消費者団体などから、「有効性のエビデンスがないのに、不必要なリスクだけにさらされる。」などとして、有用性がはっきりするまでは6歳未満の子どもについてもOTC風邪薬を使用すべきではないとの意見が示されている。
  • さらに、米国の大衆薬の業界団体のCHPA(Consumer Healthcare Products Association)は10月7日、小児用OTC風邪薬・咳止め薬について、「4歳未満は使用しないこと(“do not use”in children under four years of age)」にラベルを変更するとともに、特定の抗ヒスタミン薬を含有するものについては、「子どもを静かにさせたり、眠らせたりするために使ってはいけない(warns parents not to use antihistamine products to sedate or make a child sleepy.)」という文言を新たに加えるとするラベル変更を行うと発表している。
  • わが国でも、厚労省医薬食品局安全対策課が2008年7月4日に、2歳未満の用法を有する一般用かぜ薬・小児用(内用)、鎮咳去痰薬(内用)、鼻炎用内服薬について、[用法及び用量に関連する注意]の項に 「2歳未満の乳幼児には、医師の診療を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させること。」を追記するよう、日本製薬団体連合会を通じて 製薬企業に対し使用上の注意の改訂指示が行われている。
  • しかし、海外のように「服用させないこと」との表現とはしなかったこと、使用上の注意の改訂指示に留まったこともあり、現場では「使用上の注意の変更」についてメーカーや卸、関連団体などからほとんど伝えられておらず、一般消費者にも当然周知が行われていない。
  • このように、これら抗ヒスタミン薬を含有する小児の使用が想定される一般用医薬品を販売する際には、より積極的な情報提供が必要であると考える。
  • 本来であれば豪州などのように、年齢によってリスク分類を変えるのがよいのだが、わが国ではそういった仕組みはない。よって、指定第二類に指定し、販売時こういった注意喚起などを図るべきである。
  • 一方、これら抗ヒスタミン薬は抗コリン作用を有しており前立腺肥大の症状を悪化させる可能性がある。
  • 最近、一般用医薬品として承認されたフラボキサート塩酸塩製剤は、こういった理由で女性専用薬になったと聞いているが、これら抗ヒスタミン薬を含有する風邪薬でも前立腺肥大の症状を悪化させる可能性がある。よって、指定第二類に指定し、販売時こういった注意喚起などを図ることが適当である。
(意見内容)
デキストロメトルファンの水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤は、指定第二類に指定すべきである。
(理由)
  • デキストロメトルファン類を含有するOTC薬については近年、中国や米国などで若者の濫用が大きな社会問題になっている。
  • このため、ウォルグリーンなどの米国の大手薬局では、販売数の自主規制や年齢制限、万引きされないように直接手にとれない場所に陳列を移動するなどの対策が講じられていると報じられている他、州によってはデキストロメトルファンを含有するOTC薬の未成年への販売を禁止する法律を検討していると聞いている。
  • また日本においても、こういった特性からデキスロメトルファン類を脱法ドラッグとして指定する自治体もある。
  • 現在のリスク分類では、デキストロメトルファン類は、指定第二類ではない第ニ類に分類されているが、この分類だと、デキストロメトルファン配合の大衆薬を直接手に取ることが可能であり、大量や繰り返しの購入などを未然に抑止することが困難になる可能性がある。
  • コデインやジヒドロコデインリン酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩については、濫用などを考慮して指定第二類に指定していると考えているが、デキストロメトルファン類についても、指定第二類に指定し、販売時こういった注意喚起などを図ることが適当である。
(意見内容)
アセトアミノフェンを有効成分として含有する製剤は、指定第二類に指定すべきである。
(理由)
  • アセトアミノフェンについては、英国においてアセトアミノフェンの多量服用による自殺が多いことから、 1998年9月に、これらの成分を含む鎮痛剤の一商品あたりの錠数を、薬局向けを最大32錠入りまで、一般小売店向け(英国では小包装のものは自由販売の品目がある)は、24錠入りから16錠入りに制限する法律が施行されている。
  • また米国では「消費者は鎮痛剤を過量服用したり、アルコールといっしょに服用することの危険性をあまり感じていない。また、気付かないうちに同じ成分を含む複数の薬を飲んで、偶然に多量に飲み過ぎる可能性がある。」として、ポスターなどで注意喚起を行っている
  • 一方日本ではどうかというと、アセトアミノフェンを含有する風邪薬・鎮痛剤について、「服用時に飲酒をしないで下さい」「長期連用しないで下さい」と添付文書に記されているものの、米国のように一般に向けた注意喚起は行われていない。
  • また、過去においては、総合感冒薬の長期大量摂取が原因とされる殺人事件があったことを考えると、米国が検討しているのと同様の消費者に対する注意喚起も必要と考える。
  • 本来であれば、英国などのように1製品あたりの包装数ごとにリスク分類を変えたり、1回あたりの販売量などの制限をすることも検討すべきだが、わが国ではそういった仕組みはない。よって、指定第二類に指定し、販売時こういった注意喚起などを図りつつ、安易な使用や意図的な使用を抑制することが適当である。
(意見内容)
アモロルフィン、テルビナフィン(外用剤)、ネチコナゾール、ブテナフィンの水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤は、指定第二類医薬品ではない第二類医薬品とするのが適当である。
(理由)
  • 第一類医薬品から第二類医薬品にリスク分類が変更となったこれらの成分は安全性が確認されており、またクロトリマゾールなど他の抗真菌剤と比較しても、特に販売上の注意に違いはない。よって指定第二類医薬品とはせず、指定第二類医薬品ではない第二類医薬品にリスク分類するのが適当である。

関連情報:一般用医薬品販売制度ホームページ(厚労省)
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/index.html

TOPICS 2008.09.17 薬事法施行規則等に関するパブリックコメント


2008年10月09日 00:14 投稿

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