高齢糖尿病患者への抗精神病薬の投与は留意が必要(カナダ研究)

 一部の非定型抗精神病薬による高血糖の副作用はよく知られているところですが,高齢の糖尿病患者を対象とした研究で,定型抗精神病薬でも高血糖が起こりうるとした報告が行われています。

 (薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介することにしました。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)

研究の
目的や背景
糖尿病患者が抗精神病薬を使用した場合の高血糖のリスク
研究の方法 nested case-control study
どんな患者が研究の対象? カナダ・オンタリオ州の医療データベースに登録されている66歳以上の糖尿病患者13,817人のデータ
何を指標? インスリンによる治療群,経口糖尿病薬による治療群,非薬物療法による治療群の3群に分け,定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬の使用の有無
何を比較? 高血糖による入院数(緊急治療室での処置も含める)
わかったこと 11.0%,13,817人に高血糖による入院があった。
抗精神病薬を使用中の患者は,現在使用していない患者(最終処方より180日以上経過している)と比べ,高血糖による入院のリスクが50%上昇した。
とりわけ,新たに抗精神病薬の投与を受けた患者での発症リスクは,インスリンによる治療患者で15.4倍,経口糖尿病薬による治療患者で14.1倍と極めて高く,初めて抗精神病薬が投与された患者において発症した高血糖の約70%が投与開始2週間以内に起こった。
高血糖は非定型抗精神病薬だけではなく,定型抗精神病薬でもみられた。
コ メ ン ト アブストラクトでは,具体的な数字による比較が十分できませんが,高齢の糖尿病患者が抗精神病薬を使用すると抗精神病薬のタイプにかかわらず,高血糖のリスクが高まるということのようです。
研究者らは高血糖の発症のメカニズムとして,高齢糖尿病患者においては,血糖調節を行っているドパミンの働きが抗精神病薬により影響を受けるためではないかと推測しています。
今後さらなる研究が必要ですが,高齢の糖尿病患者に抗精神病薬が初めて処方される場合には,高血糖発症の可能性を伝えるなど十分留意する必要がありそうです。
論 文 名 Antipsychotic Drugs and Hyperglycemia in Older Patients With Diabetes
掲載雑誌等 Arch Intern Med. 2009;169(14):1282-1289.
リ ン ク http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/169/14/1282

関連情報:TOPICS
  2009.06.05 抗精神病薬と静脈血栓症リスク(英MHRA)  

論文紹介記事:
Antipsychotics in Older Diabetics Could Increase Hyperglycemia
(Medpage Today 2009.07.27)

http://www.medpagetoday.com/Psychiatry/GeneralPsychiatry/15264

Diabetic seniors at risk with anti-psychotics:study
(CBC News.ca 2009.07.28)

http://www.cbc.ca/health/story/2009/07/27/diabetes-antipsychotic.html

Older Diabetics Should Avoid Dementia Meds
(HealthDAY 2009.07.28)

http://www.healthday.com/Article.asp?AID=629397


2009年07月29日 13:11 投稿

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