スポーツ少年と保護者のドーピングに対する意識(厚生労働科学研究)

 時々紹介している、厚生労働科学研究ですが、これを掲載している厚生労働研究成果の閲覧システムが22日に大幅にリニューアルされ、いくらか使いやすくなりました。

厚生労働科学研究成果データベース
http://mhlw-grants.niph.go.jp/

 今回のリニューアルで報告書への直接リンクが可能となり、今後は閲覧の際に検索お願いする必要がなくなりました。これまでの記事についても、気づいたところからリンクを再設定する予定です。

 さて、今回紹介するのは、2010年度と2011年度に行われた「小児等の特殊患者に対する医薬品の適正使用に関する研究」の一部として行われている研究報告です。

小児等の特殊患者に対する医薬品の適正使用に関する研究(2011年度)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201132028A

「スポーツをする子どもと保護者のドーピングに対する意識調査」
  該当ファイル(一度上記にアクセスしてからでないとダウンロードできません)
    → 201132028A0031.pdf(17-20ページ)   201132028A0032.pdf(1ページ)

 この調査は東京都スポーツ少年団(→リンク)を介して同意の得られた6歳から15歳までの団員140名(男子77名、女子63名)とその保護者211名(男性75名、女性136名)を対象に行われたもので、下記のような結果が明らかになったそうです。

  • サプリメントを摂取しているとした団員は47人(33.6%)で、これら団員に誰に勧められてサプリメント摂取したかを尋ねたところ、家族と答えた団員が17人だった他、自分で考えてが5人、コーチから勧められてと答えた人が2人いた
  • サプリメント摂取後の感想は、どちらでもないが12人と最も多かったが、非常に良かったと思うと答えた人が3人いた
  • 一方、現在サプリメントを摂取していない団員にサプリメント摂取に興味があるかどうか尋ねたところ、ないと答えた人71.7%に達した
  • また、サプリメントを団員に摂取させていると答えた保護者は42.2%に達した
  • さらに、対象団員全員について、スポーツをする際に、強くなったり、上手になる薬があれば使いたいかどうかを尋ねたところ、23.6%の33人が「はい」と答えた
  • 一方、ドーピングという言葉を知ってるという団員は24.3%34人にとどまった。

 サンプル数が小さく、また調査票がないので、どういったものを「サプリメント」と定義しているかがわからず、この結果をもって全ての傾向を示すわけではありませんが、小学校高学年でドーピングというものを知らない子どもや、強くなったり上手にるためには「くすり」を使いたいと考える子どもが潜在的に存在することは留意する必要がありそうです。

 なお、この研究グループでは2010年度の研究でもスポーツ指導者に対する調査も行っています。(こちらは調査票も掲載されている)

小児等の特殊患者に対する医薬品の適正使用に関する研究(2010年度) 
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201034048A

「首都圏スポーツ少年団活動を通じて指導者、保護者並びに団員を対象にした薬物乱用(ドーピング)対策に関する研究」
該当ファイルは24番目(一度上記にアクセスしてからでないとダウンロードできません)
  → 201034048A0024.pdf  (17-19ページ。ファイルが大きいです)

  首都圏スポーツ少年団指導者106名に行われたもので、回収率69.8%、74名。(男性67.6%、女性32.4%)

  • 練習または試合中に摂取させている飲み物は、スポーツドリンク83.8%、水28.4%、オリジナルドリンク(クエン酸)1.4%の順に多かった(複数回答可)
  • 団員にサプリメントを摂らせていると答えた指導者は16.2%で、その種類はゼリータイプの補助食品や栄養補助食品だった。購入先は薬局が40.0%ともっとも多く、通販も16.6%を占めた。
  • また、団員にサプリメントを摂らせていると答えた指導者ニ「サプリメントの摂取が団員に必要か?」と尋ねたところ、必要であると答えた指導者は64.3%に達した。その理由を尋ねたところ、食事の時間と試合などが重なり、食事をしっかりとれなかった場合、食事の時間が確保できなかった場合に、次の試合に備えて必要であると回答した

 この調査では、「サプリメント」の定義を「カロリーメイトやプロテイン、アミノ酸」などのありふれた商品も対象としていたので、私達が考えるいわゆる「サプリメント」がどの程度含まれているかがわかりにくいのですが、指導者の一部に潜在的にサプリメントで団員の競技力を高めたいという意識があることは確かで、研究者も疑問を投げかけています。

 海外でも、競技力を高めたいとして少年(少女)スポーツにおいて、サプリメントを含む「くすり」の使用は珍しいことではなく、ドーピング禁止物質が使用されているケースがあるとの報告を以前紹介しました。(TOPICS 2007.06.21

 その後も、下記のような論文が出されています。

Doping: reinforce life-skills of young athletes
(Internationale Tagung „Science“. Berlin, 11. November 2009)
http://www2.hu-berlin.de/translating-doping/dokumente/tagungsberichte/3/LAURE.pdf

Evaluation of West-Austrian junior athletes’ knowledge regarding doping in sports.
(Wien Klin Wochenschr. 2013 Jan;125(1-2):41-9.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23292645

Doping and supplementation: the attitudes of talented youngathletes.
(Scand J Med Sci Sports . 2012 Apr;22(2):293-301.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20973831

 まだ、スポーツ倫理への理解が十分でない小中学生が、ドーピングにつながるような意識を持たないような大人たちの取組みは重要であり、例えば、小中学校における薬物乱用教育やくすり教育の中で取り上げて意識づけるとともに、こどもたちを指導する大人たちへのきちんとした情報提供が必要ではないかと感じました。

 また、こういった調査を大規模に行い、実態把握の必要性も感じました。

関連情報:TOPICS
 2012.11.20 筋肉増強に憧れる米ティーン、ステロイドに手を出す子も
 2007.12.19 MLBミッチェル・レポート
 2007.06.21 低年齢層に広がる運動選手の禁止薬物の使用(フランス研究)
 


2013年03月24日 21:33 投稿

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