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2007.01.14 中耳炎と抗菌剤

最近、子どもの中耳炎の処方を受けたのですが、以前は初回でもほとんどがセフェム系だったのが、今回はペニシリン系が処方されていました。傾向が変わったのかなと思っていたら、昨年策定された、「小児急性中耳炎診療ガイドライン」に沿った処方が広く行われているようです。

このガイドラインは、90年代後半から急増した耐性菌のために簡単に治らない中耳炎が多くなったことに危機感を抱いた現場の医師たちが、海外の文献を検討し、耳炎症例の起炎菌と薬剤感受性を考慮して策定したものです。

急性中耳炎を鼓膜所見と耳痛・発熱といった臨床症状から軽症、中等症、重症に分類して、重症度に応じた推奨される治療法を提示しているのが特徴で、抗菌剤の使い方もこと細かく決められています。

軽症の場合 中等症 重症
はじめの処置 抗菌剤は投与せず、まず3日間経過を観察 まずAMPC常用量を5日間投与する 鼓膜を切開し、
1)AMPC 高用量
2)CVA/AMPC(1:14製剤)
3)CDTR-PI 高用量
いずれか5日間投与する
改善が見られない場合 AMPCを常用量5日間投与 感受性を考慮し、
1)AMPC 高用量
2)CVA/AMPC(1:14製剤)
3)CDTR-PI 高用量
4)鼓膜切開+AMPC常用量
のいずれかの治療を5日間行う
鼓膜を再度切って、
上記処方を感受性を考慮し、薬剤を変更して5日間高用量投与する
上記の方法でも改善が見られない場合 1)AMPC高用量
2)CVA/AMPC(1:14製剤)常用量
3)CDTR-PI常用量
のいずれかを5日間投与する
1)鼓膜切開+AMPC 高用量5日間投与
2)鼓膜切開+CVA/AMPC(1:14製剤)5日間投与
3)ABPC、CTR点滴3日間
のいずれかを行う
ABPC、CTR点滴を3日間行う

また、治療全般についても、下記のような点が強調されています。

  1. 軽症例に限って3日間は抗菌薬の投与を行わず、自然経過を観察する
  2. 耳痛に対して、抗菌薬の効果は不明である
  3. 耳痛や発熱(38.5℃以上)に対しては、アセトアミノフェンの使用を推奨するが、鎮痛薬の耳痛に対する効果は十分には検討されていない
  4. 低年齢、保育園児は重症化しやすいので治療上注意が必要である。また、鼻疾患を合併している例では、鼻治療も併せて行うことの検討が必要

患者さんの話と処方された薬剤の種類で、私たちも症状の重症度や治療の段階がわかるのではないかと思います。最近の欧米の報告でも、初期の急性中耳炎については抗菌剤を使用した場合も使用しないで経過を見ても変わらないというエビデンスが少なくなく、患者さんから「どうして抗生物質が出ないの」と言われても、患者さんにこういった理由があることを私たちは説明する必要があるでしょう。

このガイドラインは、日本耳鼻咽喉科感染症研究会(http://www5.ocn.ne.jp/~entinfct/)のウェブサイトに全文が掲載されていて、また読売新聞・最新の医療でも紹介記事が掲載されています。

小児急性中耳炎診療ガイドライン(案)(2006.6.2修正 PDF:2.83MB)
   http://www5.ocn.ne.jp/~entinfct/otitis-media-guide-line.pdf.pdf   

参考:読売新聞1月12日
   http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20070112ik09.htm

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