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第86回アポネットR研究会報告

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平成18年10月4日(水)  会場:足利プリオパレス

参加者:29名(うち薬剤師25名)

1.製品情報

骨粗鬆症治療剤『ボナロン錠35r』  帝人ファーマ株式会社

2.学術講演

「骨粗鬆症のプライマリケア」

講 師:松村 崇史 先生
(松村外科整形外科医院・院長)

1.骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は通常、あまり症状はありません。そのために、腰痛や骨折してはじめて治療を開始することが少なくありません。ですから、患者さんには骨折を予防することを最終目標として、治療を開始するようにしています。

骨粗鬆症の定義ですが、まず低骨量であること、さらに骨の微細構造が弱くなることで、骨折を起こしやすい状態をいいます。

また、診断基準ですが、大きくわけて前段階である「骨量減少」と「骨粗鬆症」の2つにわけることができ、骨密度値または、脊椎のレントゲンをとって骨粗鬆化があるかどうかで診断を行います。過去に骨粗鬆症関連の骨折(脆弱性骨折)の既往がある場合には、骨密度がYAM の80%未満であっても骨粗鬆症と定義しています。

骨密度値 脊椎X線像での骨粗鬆化
正常 YAM の80%以上 骨粗鬆症化なし
骨量減少 YAM の70%以上80%未満 骨粗鬆症化の疑いあり
骨粗鬆症 YAM の70%以上80%未満で、
脆弱性骨折の既往あり
骨粗鬆症化あり
YAM の70%未満
 ※YAMとは、若年成人(20〜44歳)の骨密度の平均値をいう

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2.骨量の測定法

骨量の測定には次の4つの方法があります

名称 測定方法 長所 短所
DXA法
(デキサ法)
X線を使って、骨の密度を測定する。 通常のX線撮影に比べ、放射線を浴びる量はごく微量ですむ。
検査台に寝たり、腕を伸ばして座っているだけで数分で検査できる。
器械が高価で、プライマリケア医には向かない。
MD法
(DIP法)
(CXD法)
手の骨(2中手骨)をX線撮影し、コンピューターの画像の濃淡から、骨量を算出する。 X線撮影装置のある医療機関であれば、どこでもできる。 腰椎の骨密度との相関性に問題がある。
QCT法 CT装置を使い、骨の断層像から骨の密度を測定する。 皮質骨、海綿骨それぞれの骨密度の測定が可能。 放射線を浴びる量が比較的多い。
超音波法
(QUS法)
かかとの骨に超音波を通し、その通り抜ける速度と減衰率を測って、骨量に相当する指標を求める。 X線を浴びないため小児や妊婦でも測定可能。

  参考:これだけは知っておきたい骨粗鬆症(別冊NHKきょうの健康,1997)

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3.骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症で問題になるのは、骨折により寝たきりになるリスクが高くなるということがあります。

例えば、大腿骨頸部骨折を起こすと10%は寝たきりになるといわれ、2年以内の死亡率も10〜20%と決して低くありません。ですから、骨折防止という観点から、骨量を増やすということが求められます。

1.骨粗鬆のタイプと薬剤の選択

骨粗鬆症はその成り立ちから、2つのタイプにわけることができます。

(1)高回転型

若い人に多いタイプで、過剰な骨吸収に骨形成が追いつかない状態で、理論的には骨吸収抑制剤を用います。

(2)低回転型

高齢者に多いタイプで、骨吸収・骨形成が共に低下している状態で、理論的には骨形成促進剤を用います。

骨形成促進剤 骨吸収抑制剤
カルシウム剤、活性型ビタミンD剤
ビタミンK剤
蛋白同化ホルモン
(臨床的にはほとんど用いられない)
PTH
(甲状腺ホルモン剤、本邦未承認、週1回の皮下注射を半年間)
カルシトニン製剤
イブリフラボン
エストロゲン製剤
ビスホスネート
SERM

※骨吸収や骨形成の状態については、下記のような骨代謝マーカーというのを用いて、判断します。

  • 骨吸収マーカー(DPD:尿中デオキシピリジノリン)
  • 骨吸収マーカー(NTX:尿中T型コラーゲン架橋N-テロペプチド、日内変動がある)
  • 骨形成マーカー(BAP:血中骨型アルカリフォスファターゼ)
2.骨量減少者の治療

薬物治療よりも食事・運動療法を優先しますが、55歳未満の場合や、年3%以上の骨密度減少者(fast bone looser)、ステロイド使用者などの骨粗鬆症になりやすい合併症を有する場合には、早期に薬物治療を開始します。

3.薬剤の併用

骨粗鬆症治療薬の臨床開発は、単剤による治療効果をもとに評価されているため、骨粗鬆症治療は単剤投与が原則になっています。

ただ、ビスホスネートを使用する場合には、強力に骨吸収を抑制するために、血清中のCa濃度が下がりやすくなります。ですから、カルシウム剤の併用やビタミンD剤を併用した方がよいのではないかという意見があります。

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3.骨密度への正しい理解

「骨粗鬆症=骨密度」と考えがちですが、実際には「骨質」も重要です。

また、治療を開始しても、下記のような理由で骨密度の増加という形で薬物効果がすぐに現れない場合があるので、患者さんに説明する必要があります。

1.橈骨、中手骨では骨密度が増加しにくい

骨密度は、腰椎や大腿骨頚部で測定するのが原則ですが、施設によっては橈骨、中手骨部での測定をする場合があります。この橈骨、中手骨部の骨密度というのは増加しにくく、骨密度の増加が数値となって反映されない場合があります。

ですから、患者さんから効果が現れないという不安を聞いた場合には、医療機関が行っている骨密度の測定法を確認するとともに、骨代謝マーカーを測定している場合には、「骨吸収マーカーが下がっているので、骨粗鬆症になりにくい状態になっていますよ」という説明することで、患者さんの治療へのモチベーションが上がると思います。

2.ビスホスネートに対して、5%程度効かない人がいる

3.カルシウム摂取が不足している

骨粗鬆症治療・予防のためには、1日800rカルシウムの摂取が必要といわれています。カルシウムが豊富な食品としては、牛乳や乳製品、大豆、野菜の摂取が勧奨されていて、食事でとれない場合はカルシウム剤で補給します。

4.ビスホスネートを服用中は、一定期間骨密度の低下が続く

ビスホスネートを服用中は、強力な骨吸収抑制のために半年程度は骨密度の減少が続くことがあります。これは骨吸収抑制作用に対して、骨生成作用がなかなか上回らないためにおこる現象で、この場合も、「骨吸収マーカーが下がっているので、1年後には上がりますよ」と説明するとよいでしょう。

4.骨粗鬆症を予防するための生活スタイル

食生活において、カルシウムの十分な摂取の他、ビタミンDやビタミンKが不足しないようにすることは言うまでもありませんが、この他にも、次のような危険因子を排除することによって、骨粗鬆症の予防につながるといわれています

  • リンの過剰摂取(コーラにはリン酸が多い?)
  • 食塩過剰摂取
  • ダイエット
  • 運動不足
  • 日照不足
  • 喫煙
  • アルコール多飲(1日2合程度までならOK)
  • コーヒー多飲(1日2杯程度までならOK)

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5.ステロイド性骨粗鬆症

リウマチの患者さんなど、ステロイドを普段から多く飲んでいる人には、骨粗鬆症が多いといわれています。これは、ステロイドが骨芽細胞による骨形成を抑制したり、間接的に破骨細胞による骨吸収を促進するためにおこります。

治療のガイドラインでは、経口ステロイドを3ヶ月以上使用しているか、または今後使用する予定がある場合には、骨折予防のための治療が必要として、YAM が80%以上で、かつプレドニゾロン換算で5r/日未満の患者さん以外は、何らかの治療が必要としています。

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補足

第8回日本骨粗鬆症学会が、2006年10月13日、東京都内で開催され、骨折予防の観点から薬物治療の開始基準を新たに定めた「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(従来の名称から変更)が発表されています。

今回のガイドラインでは、これまでの骨粗鬆症の定義を見直したほか、治療の目的について、「骨折の危険性を減らし、QOLの維持改善をはかること」が明記され、骨折を予防するために、骨粗鬆症の診断基準とは別に、新たに薬物治療の開始基準を定められているのが特徴です。

この薬物治療の開始基準とは、従来の診断基準で骨粗鬆症に該当する人に加え、骨密度が成人平均値の70〜80%に減少した閉経後の女性または50歳以上の男性のうち、(1)1日2単位(合)以上の飲酒、(2)喫煙、(3)大腿部骨折の家族歴 のいずれか1つを有する場合が該当するそうです。

参考:Japan Medicine 2006年10月16日号

文責:小嶋慎二

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関連リンク等を紹介します。

関連サイト等は、まずは薬剤師役立ちページ「骨粗鬆症」へジャンプ

骨粗鬆症の治療(薬物療法)に関するガイドライン2002年版
    (日本骨粗鬆症学会HP内)

http://www.h3.dion.ne.jp/~kenkou3/2002gl.pdf

骨代謝マーカーガイドライン2004年版
    (日本骨粗鬆症学会HP内)

http://www.h3.dion.ne.jp/~kenkou3/mgl04.pdf

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン

http://www4.ocn.ne.jp/~nurophth/o_steroid_osteoporosis.htm

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