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2007.03.21 厚労省、タミフルの10代患者への原則使用中止を指示

厚労省幹部と中外製薬の担当者は、21日午前0時すぎから、同省で記者会見を行い、先月新たに2件の「異常行動」の報告があったとして、、輸入販売元の中外製薬に対し「10歳以上の未成年の患者には原則として使用を差し控えること」と添付文書の警告欄を改訂し、緊急安全性情報を医療機関に配布するよう指示した。(下記の警告が追加される)

緊急安全性情報〜タミフル服用後の異常行動について(中外製薬ウェブサイト)
  http://www.chugai-pharm.co.jp/html/info/070321.html

 10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。

 また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。 なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

10歳代のタミフル服用後の転落・飛び降り事例に関する副作用報告について(厚労省3月21日)
  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0321-1.html

 タミフル服用後の異常行動について(緊急安全性情報の発出の指示)(厚労省3月20日)
  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0320-1.html

今回の緊急安全情報は、「10代以上は、親が保護することが難しい(異常行動を力づくで抑えること)場合もあるので、改めて注意喚起した」としている。

今回の指示は事実上の原則禁忌である、現場にさらなる混乱を招くに違いない。しかし、タミフルは、新型インフルエンザの制圧のためには現時点では必要な薬であり、新型インフルエンザが流行したら、10代患者だけにはリレンザで対応するのだろうか?

ロイターやAPなどの海外の報道も現時点では、事実関係を伝えるだけで、特に厚労省の対応に特に問題があったとはしていないが、AP通信は「昨年発表したFDAの調査の詳しい数字を国(厚労省)は明らかにしなかった」と、有害事象の情報開示の遅さを暗に批判している。

今回問題が大きくなった背景は、AP通信が指摘するように昨年11月、 米FDAが「服用と異常の因果関係は否定できない」との内部資料を公表した時点で、因果関係はまだっきりしないが、これだけの報告の事実があったと厚労省が情報を開示をしなかったためと考える。

メディアも、今になって「薬害だ」とタミフルが全て悪いが如く、白・黒で報道するのもどうかと思う。症例の公表を隠していたとの論調もあるが、昨年11月のFDAの内部資料(ほとんどが日本症例)でかなり明らかになっている。メディアは、海外報道の表面だけをとりあげ、その中身を検討せず、「FDAでも関連性はないとしている」という結果のみを繰り返し報道、その一方で患者向け説明書Patient Package Insert などが変更されたことはほとんど伝えてこなかった。

このときメディアが、「米国でも、因果関係は認めていないが、服用後の注意書きを改めている。日本でも一応注意した方がよいのではないか」と報じたり、厚労省もFDAと同様の「インフルエンザでタミフルを服用後(特に子どもの場合)すぐは、自傷と錯乱のリスクが高まる可能性があるので、異常行動の兆候がないかどうか近くで(しっかりと)監視されるべきである」とする添付文書の変更をその時点で行っていれば、今回のような事態に至らなかったのではないかと考える。

タミフルの添付文書には以前より、「重大な副作用」の項目に「異常行動」の可能性の記載があり、散発的に報道される事実を考えれば、おそらく現場でもタミフルの処方に慎重になっていただろうし、また、リレンザの供給状況も変わっていたに違いない。メディアこそ、去年11月の時点で、「日本でも慎重使われるべきではないか?」と報じることは可能だったはすである。

また現場では、添付文書の「重大な副作用」の項目が軽視されている感がある。おそらく厚労省も添付文書に「異常行動」の記載があることから、改訂の必要まではないと考えたのだろう。患者の不安をあおったり、薬を飲まなくなることもあるとして、なかなか伝えずらいかもしれないが、スチーブンソン症候群や血管浮腫など、すぐにの対応が必要な副作用は伝えているはずである。「厚労省が因果関係がないとしているから大丈夫」として、タミフル服用後の異常行動の可能性を患者に伝えるということを現場では怠っていなかったのだろうか?

「重大な副作用」や海外の公的機関の報告を、現場ではどう解釈して、それをどう患者に伝えていくべきなのかを、私たちも改めて考えるべきではないだろうか。

厚労省では、タミフルの服用と異常行動との因果関係は「否定的」との考えを繰り返し主張していたが、22日、厚労省の辻哲夫次官は定例記者会見で、10代での転落事故で死亡以外の事例を十分に検証していなかったことを認め「(現在の否定的な見解は)今後の検討の中で変わる可能性もある」と述べ、従来の見解を事実上撤回、今後副作用として報告されている約1800件の症例を調べ直し、早ければ4月上旬にも開く審議会に報告、専門家の意見を聞くとしている。

また、柳沢厚労相も23日の衆議院厚生労働委員会で、服用後の「突然死」についても因果関係を再調査する方針を示した。

関連情報:TOPICS
    2007.03.01 厚労省、タミフルに限定せず注意喚起
    2006.11.14 タミフルに異常行動の注意喚起の記載を求める(米国)
    2006.10.27 インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究

参考:中日新聞3月23日
     http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070323/mng_____sya_____003.shtml
    朝日新聞3月23日
     http://www.asahi.com/life/update/0323/014.html

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