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2007.05.19 子どもたちの薬物に対する意識、学校現場での取り組み

5.9のTOPICSで、「日本でも米国同様、(薬物濫用の実態)調査の対象をたばこやアルコール、大衆薬などにも広げるべき」と述べましたが、文部科学省が昨年、小・中・高校生を対象とした全国調査を実施していました。今年の3月にその結果が文部科学省ウェブサイトに掲載されているので紹介します。

薬物等に対する意識等調査報告書(2007年3月)
 (文部科学省 スポーツ・青少年局学校健康教育課)
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/03/07042500.htm

この調査は、2006年2月に全国の小学校5年生から高校生3年生までを対象に行われ、67,435人から回答が得られています。データも各学年ごとにまとめられ、過去1997年、2000年に行われた調査結果との比較も示されるなど興味深い内容(第1章・第2章)になっています。

結果をみると、飲酒や喫煙への関心は過去2回の調査と比べ低くなる傾向で、「害になる」と考える生徒も増加傾向にあります。また、薬物に対する考え方も、「絶対に使うべきでない」と回答した割合が、過去2回の調査と比較し、男女ともいずれの学年においても高くなったという結果が得られています。

しかし、飲酒に対する関心と薬物の印象とのクロス集計を行うと、「酒を飲みたいと思ったことがある」群は、「酒を飲みたいと思ったことがない」群に比べ、薬物について肯定的な印象を持つ割合が高く、中でも「気持ちよくなれる気がする」と答えた割合が最も高くなっっています。これは、喫煙に対する関心と薬物の印象とのクロス集計でも同様の結果が得られており、ドラッグの入り口ともいわれる飲酒・喫煙の害についての啓蒙の重要性が改めて示されています。

また、この調査ではたばこやお酒の宣伝・コマーシャル、酒やたばこの自動販売機に対する印象についても尋ねています。

広告については、学年が低いほど「かっこわるいと思う」「体に悪いのにこうした宣伝をするのはおかしいと思う」と回答した割合が高くなっていますが、一方で「特に何とも思わない」と回答した割合は学年が上がるにつれて顕著に高くなっています。

自動販売機については、「未成年者が買えないようにもっと時間や場所を限定した方がよい」、「未成年者が買えないよう自動販売機はなくした方がよい」、「未成年者が買えないように工夫した方がよい」など規制を求める回答をした割合は、いずれの学年においても前回調査と比較し、増加傾向にありますが、一方で学年が上がるにつれて、「いまのままでよい」「考えたことがない」と答える割合が増えています。私たち大人は、やはりこの問題に真剣に取り組む必要性がありそうです。

さらに、この調査では、学校現場での薬物乱用防止に関する2004年度における指導実施状況についての調査(第3章)も行っていて、762校(小学校261校・中学校258校・高等学校243校から有効回答が得られています。

それによれば、小学校の82.8%、中学校の91.1%、高等学校の93.0%で、薬物乱用防止に関する指導を実施していると回答し、この数字は過去2回の調査と比べ、すべての学校種で割合が増加しています。体育または保健の授業の中で取り上げるケースが多いようです。

また、薬物乱用防止教室(警察官や麻薬取締官・員OB等が直接学校に出向き、児童生徒に「薬物の恐ろしさ」や「薬物乱用をしないこと」などについて、ビデオ等も活用しながら直接教える)の実施状況について尋ねたところ、小学校では261校中118校(45.2%)、中学校では258校中175校(67.8%)、高等学校では243校中182校(74.9%)が実施したと答えています。

また、薬物乱用防止教室で依頼している講師の職種をたずねたところ、小中高校ともに「警察職員」が多く占めていますが、「学校薬剤師等薬剤師」も、小学校で19.5%、中学校で16.3%、高等学校で16.7%と2番目に多く占めています。また、高等学校では「薬物依存回復者」15.2%が3番目に多く占めるなど、怖さを生の体験で伝えることも重視されているようです。

報告書を見る限り、学校における取り組みは一定の効果を上げていると思われます。今後は家庭や社会での取り組みも積極的に行っていく必要があるでしょう。

関連情報:TOPICS 2007.05.09 若者のドラッグ使用実態調査、今秋にも実施へ
          2007.01.17 米国中高生の薬物濫用実態調査

5月19日 12:50掲載

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