第 4 章

運命と選択

※運命……あなたの意志だけでは決められない因縁




 若い時は「運が悪くて…」と聞くと、言い訳的な言葉と受け止めましたが、自分が90歳を越した今、小学校、中学、大学の卒業写真を取り出して見て、つくづく運命の大きさというものを実感するようになりました。あの頃はみんな元気で、希望に満ちた若々しい顔つきで並んでいましたが、今や生存者は、それぞれ数人ほどになってしまいました。
 学生時代スポーツ選手で鳴した友、病人を助ける医者になった6人の級友→それが若くして思わぬ病気でどんどん他界…。離婚したり、愛人を作って家庭を混乱させた友、思わぬ事故で死んだ友…みんな思いもかけない人生行路を辿っているのです。
 物を落としたら直下に落ちる→これは引力の法則で因果=原因と結果ですが、周囲の環境は刻々変わって「諸行無常」…木の実でも、風の強弱、方向の変化によって、池に落ちて沈むもの、肥地に落ちてすくすく成長するもの→これを因縁といって、自分ではどうしようもない…。
 この因縁を私流に分析しますと、上図の(1)から(7)までとなり、私たちは、この88%という歴史的宿命の大波を乗り切って、生きて行かなければならないのです。残る12%だけが、自分自身の選択→しかしこの中に、あなたの開運を決める重大な鍵がある…。
 生国も故郷も、また親さえも、自分では選択できません。また世相や価値観の目まぐるしい変化→終戦までの帝国主義社会から、一変して幻想的平和憲法の下での民主主義社会…この間を私たちは、一所懸命生きようと泳いできました。
 人間関係は本当に一期一会(いちごいちえ)です。赤の他人でありながら、一番絆(きずな)が強くて、本音でつき合える間柄になった夫婦でさえも、相手の愛情と損得という納得があってのこと…。それに続く肉親、親戚、親友、友人、知人、赤の他人まで、いよいよ「縁あって…」としか言えません。
 松下幸之助は「おれのやったことは10%、90%は運命だ」といいましたが、「おれの貧乏と虚弱な体、それに学歴のないこと…これはおれの幸運だった」ともいいました。金を粗末にせず、体に気をつけ、他人(ひと)の話をよく聞いて商略を練る…この「逆転の発想」こそ、彼が傑出した人物であることを示していると思います。
 このように幸運は逃さず、不運を幸運に逆転させる選択→それはあなたの優れた知識と知恵から生まれます。



第5章 成人までの後天的発育

目  次

ホームページへ戻る