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薬局機能評価とは

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1.「薬局のグランドデザイン」が示したもの

読売新聞は2004年10月13日、『薬局の「機能」を第三者機関で評価し、公表』と、日薬が薬局の機能を第三者機関で評価する制度の導入を決めたと大きく報じている。

しかし、地域薬局・薬剤師のあるべき姿が示されたのは、何も今回に限ったことではない(本ページの資料を参考)。1997年1月に日薬医薬分業対策本部が答申した「薬局のグランドデザイン」では、すでに具体的な課題が示されているのである。

この答申によれば、将来目指すべき活動指針として「消費者・患者志向」「適正使用」「情報」「資質」「主体性」を掲げて、次のような、「薬局の基本理念」「薬局サービスのあり方と薬剤師の役割」が示されている。

薬局の最も重要な基本理念
  1. 効率的な医薬品提供に責任を持つこと
  2. 医薬品の適正使用を推進すること
薬局サービスのあり方 今後の課題
地域住民の必要とする医薬品を
  いつでも地域差なく提供
地域住民の求める全ての医薬品をいつでも提供でき、 医薬品適正使用の役割を果たせる機能と資質を備えた薬局(=自己完結型の薬局)の整備
農村地域、過疎地等での医薬品提供体制の構築
薬局間の機能分担・連携による提供体制
医薬品の適正使用による
  患者QOL向上への貢献
ファーマシューテイカルケアの普及と推進
薬物治療評価に必要な独立・非営利の情報源の確保
患者の薬物治療に関するデータの収集と活用が可能なシステムの構築
医薬品の品質管理体制の構築
最小薬剤による
  最適な薬物治療達成への貢献
医師の処方設計への提案
薬物治療の過程におけるモニタリングや疫学調査への協力
薬剤価格や薬剤費の適正化等、
  社会保障制度の健全な運営への貢献
薬物治療のモニタリング
ジェネリック医薬品の活用
医薬分業制度の費用対効果の統計的掲示
薬剤費削減の目標
調剤業務の合理化や制度改正への提案
国民のセルフケア支援 スイッチOTC薬の拡大
薬局製剤の活用
OTC薬有効活用のための情報源の作成
予防・保健栄養OTC薬の普及への貢献
自己検査薬(器具)の活用と助言
在宅医療、在宅福祉への参画  
医療廃棄物や不要医薬品の
  回収及び廃棄
 
地域社会への貢献 大規模災害等、非常時に備えた医薬品の備蓄
地域内で使用する医薬品リストの作成
環境衛生向上への調査・助言

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2.今なぜ、薬局機能評価が必要なのか?

ではなぜ、「薬局のグランドデザイン」というものがありながら、さらに薬局機能評価の必要性が求められているのであろうか? 平成16年3月に示された、「薬局機能検討検討事業報告書」日薬HP、会員向けページ「その他の医薬及び薬事情報」のページで、「平成14〜15年度 薬局機能評価検討事業報告書のとりまとめについて」の項目で、PDFファイルで入手することができる)によれば、薬局機能評価の必要性として、日薬は次のような点をあげている。

  1. 薬剤師業務の真の意義が、必ずしも国民・患者に理解されているとは言いがたい状況が続いていた。
  2. 一方で、薬局の形態も調剤中心・OTC中心など多様であるため、薬局・薬剤師のあるべき姿や業務に関する実態をわかりやすく説明することが難しかった。
  3. インフォームド・コンセントの推進、医療に関する国民の権利意識が変化し、国民・患者からは、技術・知識のさらなる向上とともに、施設に関するアメニティの充実や医療情報の公開など、量的な充実から、質的な充実が求められている。
  4. 今後、国民や患者は、かかりつけ薬局(地域薬局)・薬剤師から、医薬品の適正使用に資する薬学・医学などに関する幅広い情報とともに、自身の健康保持のための情報の提供を受けることにより、自身の薬物療法(健康増進)に積極的に参加することが考えられる。
  5. 薬局・薬剤師業務への国民・患者の理解の推進と、薬局業務のさらなる質的向上を目指すため、薬局の持つ機能を評価できる仕組みを構築構築することにより、国民が安心して利用できる理想的な薬局像について示すとともに、第三者による評価結果を公表することで、国民が薬局を選択する際の一つの目安となることが期待される。

確かに、従来の「基準薬局」制度は、認定基準にあいまいさがあり、「薬局業務運営ガイドライン」「薬局グランドデザイン」などは、理想論が先立ち、現実に合わない部分も感じられる。一方、薬局業務に関するいわゆる期待や満足度は、国民・患者の「薬局での経験」に基づく、いわゆる個人的な尺度であり、これのみで、薬局を評価することもできない。また、提供される医薬品情報などの「質」についての評価については、薬剤師等の専門家による業務評価も不可欠である。

こういったことを考慮すると、国民が安心して利用できる「理想的な薬局」を示すためにも、日薬が今回、薬局の持つ「機能」を客観的に評価する仕組みづくりを目指していたのは、薬局・薬剤師の存在意義を示すとともに、医薬分業の質的向上のためにも、確かに必要なことかもしれない。

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3.薬局機能評価はどう行われるか

では、こういった機能評価はどのように行われているのだろうか? 最近、大学や病院など、さまざまな業務分野における機能評価は、通常、以下の3つの観点から行われているという。

構造(structure) 業務を提供する構造・設備・人員・組織等

過程(process)   業務行為そのものの評価(但し、客観的評価は難しい)

結果(outcome)  業務成果からの評価

今回の薬局業務評価は、これらの3つの観点を尊重しつつ、業務を提供する薬局・薬剤師の視点と、利用者である国民・患者の視点の双方から、薬局業務の質を評価することを目指して、次のような6つの領域の全245評価項目を設定した

「薬局機能評価マニュアル」(現在、改訂版 ver.1が、日薬HP、会員向けページ「その他の医薬及び薬事情報」のページで、「平成14〜15年度 薬局機能評価検討事業報告書のとりまとめについて」の項目で、PDFファイルで入手することができる。)を作成した。今後はこの評価項目を用いた「薬局機能評価」を試行し、2007年の制度化にに向けて取り組むという。

「薬局機能評価マニュアル」(改訂版 ver.1)で示された、薬局機能評価項目
領域 主な項目 主な確認事項
基本項目 関係法令の遵守 薬局として業務を行うために必要な指定・届出状況、
薬局の業務量に応じた必要な薬剤師が確保されているか
開設者 薬局の職業倫理に関する方針が明確であり、それらを全職員に周知すると同時に、関係法規の理解と健全な運営に努力しているか
管理薬剤師 管理者としての倫理観と使命感を持つと同時に、薬局業務運営ガイドラインに従った、適正な薬局業務の運営を行っているか
勤務薬剤師 薬剤師倫理規定・薬剤師綱領等を正しく理解したうえで、薬局業務を行っているか
提供品目 提供品目の種類 一般用医薬品 地域のニーズに対応できる薬効群と品目数の状況
医療用医薬品 処方せん応需必要な品目数の備蓄
患者の要望に対応する為の後発品の備蓄
その他の提供品 衛生用品要因や医療用具等の取り扱いの有無
管理状況 品質、在庫、回収と廃棄、規制医薬品の管理
構造・設備 薬局の構造
住民・患者のプライバシー、高齢者や障害を持つ方々に配慮しているか
調剤室部分を除いた、設備
快適さ・安心感
薬局内の環境を清潔・衛生的に保つ為の努力、メンテナンス等が行われているか、禁煙の有無
住民へ
提供される
サービス
接遇 接遇や応対が適切であるか
在宅医療 在宅医療に対するサービスの提供が可能か
介護・福祉サービスの提供 地域住民・患者等の介護・福祉に関する相談に応じる体制が整っているか
地域医療情報等の提供 地域の医療機関の情報を把握し、適切なアドバイスができるか(休日・夜間時に関する情報・紹介)
地域住民への啓発活動 健康や医薬品等に関する情報を提供の有無、薬局機能や提供するサービス内容の掲示、情報開示
開局時間 地域住民の需要や、地域医療機関の診療状況を加味した開局時間・開局日か、休日・夜間の対応状況
処方せん受付 即時調剤が不可能な場合の対応状況、待ち時間
業務の自主点検と改善活動 様々な問題が発生した場合の対応が、適切に行われるか、利用者の意見を収集・反映させているか
組織・管理 理念・基本方針、組織 薬局の適切な運営を行うための組織が確立されているか
教育・研修 薬剤師、その他の職員に対する研修を行い、職員の知識向上の取り組んでいるか、や苦学生・薬剤師教育に協力的であるか
財務・経営管理 必要な薬局の基本的な収支を把握しているかか
調剤報酬請求業務 調剤報酬算定の趣旨・要件を正しく理解し、適切な保険請求業務が実施されているか
待遇・人事管理 基本的な福利厚生制度が整っているか、職場環境や人事管理が適切か
緊急時対応 防犯・防災対策や災害時の対応が明確になっているか
販売姿勢 一般用医薬品の提供にあたり、販売姿勢に留意しているか
専門性に基づく業務等 一般用医薬品の提供 必要な情報の収集と提供を行い、適切な販売を行っているか
調剤室の環境整備 調剤に必要な機器・器具が設置され、定期的に保守・点検・清掃が行われているか
調剤(実務) 適切な調剤業務が実施され、質が担保されているか
医薬品情報の収集・管理体制 患者及び医療関係者が必要とする最新の情報を常に入手、活用、提供できる体制が整備されているか
処方せん・調剤録・薬歴簿の保管 個人情報に関わるものが適切に管理されているか
調剤過誤・事故発生時の対応 対策が立てられ、適切な対応が可能か
医師・医療機関等との連携 他施設の薬剤師との連携も取れているか
医薬品等の有効性・安全性の確保 医薬品の副作用情報等の報告や医薬品に関する各種疫学調査・研究に積極的に参加・協力しているか

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4.薬局機能評価の課題

今回の薬局機能評価は、地域に存在する「各薬局のランク付けを行うものではないか」と誤解する向きもあるが、むしろ、薬局自らが地域へ提供する薬局業務の質を点検し、改善を行うための一つのツールとしての利用が可能な客観的評価基準として、むしろ積極的に活用すべきではないだろうか。

私もチェックしてみたが、確かに、この「「薬局機能評価マニュアル」を用いることにより、自分の薬局の優れた業務や不足する業務を把握することができ、自らの薬局に何が足りないのかを自己認識することができた。また、薬剤師の立場、経営者(開設者)の立場、利用者の立場、そして医療の一員として、今、何が求められているかが明確化されている点は評価したい。

薬局機能評価を実施することにより期待できる効果(文献3より引用)
  1. 薬局開設者・薬剤師・職員の意識向上
  2. 薬局業務の円滑化と業務の質の向上
  3. 地域における薬局と他の医療機関との機能連携の円滑化

しかし一方で、このマニュアルには、現状の薬局の規模や形態が必ずしも反映されていないという欠点がある。特に薬局規模については、複数薬剤師勤務の、数多くの処方せんを応需する大型の調剤薬局を想定したものになっており、処方せん応需する意思があっても、実態として「処方せん発行枚数が少ない」「面分業がすすんでいない、理解されていない」地域の小規模薬局においては、少しハードルが高すぎる気もする。

また、薬剤師会や薬局・薬剤師集団など、組織として本来取り組むべき項目までもが含まれているように思われる。例えば、医師や医療機関等との連携は、どの薬局にも任せられるという、薬剤師会が組織をあげて一定のレベルを確保することが、まず先に求められると思うし、また医薬品の情報も、個々の薬局・薬剤師が入手した情報だけではなく、薬剤師会(特に日薬)としての独自の情報の構築と提供も必要と考える。

なぜなら、今日の情報社会においては、患者や国民はあらゆる手段で、薬と健康に関する情報を得ることができ、ときに過剰な期待を持ったり、惑わされているのである。少なくとも、セルフケア・セルフメディケーションの面での、薬剤師独自のアピールが必要と考える。

すでに、医療の分野でも、病院や介護施設などの第3者による評価は積極的に行われている。 同じように地域薬局や開局薬剤師にも、第3者による評価も今後は必要であろう。そして私たちは、そういった声に耳を傾け、多くの薬局が、この大きな医療の変革に対応していかなければならないであろう。

資料:時代の要請とそれに応じて変化してきた動きと、今後予想される流れ
1985 医療法の改正 医療計画条項中に初めて「薬局・薬剤師」が記載
1990.4.01 「都道府県薬剤師会認定基準薬局」制度の施行 19項目の認定基準と8項目の努力目標
1992.7 第二次医療法の改正 医療の担い手として「医師,歯科医師,薬剤師,看護婦」と薬剤師が明記された。これにより,医療におけるその責任はー段と重くなる
1993.4.30 薬局業務運営ガイドラインの通知
(東京都では、ガイドラインを基にした独自のかかりつけ薬局指針を実施)
薬局の独立確保やリベートなどの便益供与の規制
詳しくはこちら
1993.8 FIP東京大会が行われ、ファーマシューティカル・ケアGPP(薬局業務指針)について議論される  
1994.8 在宅患者訪問薬剤管理指導料の新設  
1996.4 改正保険薬局及び
保険薬剤師療養担当者規則
の施行
 
1997.1 日薬医薬分業対策本部が
「薬局のグランドデザイン」を答申
将来ビジョンと21世紀初頭に向けての活動指針
1997.4 改正薬事法・薬剤師法の施行  
1997.4.1 「都道府県薬剤師会認定基準薬局」制度の新実施要綱の施行(実施要綱の前面改定) 39項目の認定基準  
詳しくはこちら
岐阜薬剤師会の基準薬局とは)
2000.4.1 介護保険法の施行  
2002.4〜
2004.3
「薬局機能評価検討事業」
(厚労省補助金事業)の実施

「薬局機能評価マニュアル」の作成
1年目は、「理想的な薬局像」(あるべき薬局の機能)について、
2年目はこれに加え、機能評価を行う方法について、医師・学識経験者・市民団体の代表などによって構成される検討会を設けて、検討が行われた。
2004.4〜
2007.3
「薬局機能評価制度導入整備事業」の実施

第三者機関による「薬局機能を評価する仕組み」の導入に向けた検討が予定
「薬局機能評価マニュアル」(改訂版 ver.1)を用い、全国約5000の薬局において再度試行を開始し、どの項目を重点項目とするかなどを検討したうえ、判定のルールを策定する。これにより、想定される問題点の把握や評価項目の更なる修正が行われる予定。
2007.4〜 「薬局機能評価制度」の実施? 認定は更新制とする。評価基準には順次、新たな項目を追加予定。

文献:
1.薬局のグランドデザイン最終答申:日薬医薬分業対策本部 1997年1月(日薬雑誌1997年3月)
2.薬局機能評価検討事業報告書:社団法人 日本薬剤師会 2004年3月
3.保険薬局情報ダイジェスト:東邦薬品株式会社 2004年11月

(文責:小嶋慎二)

最終更新日 2004年11月18日

関連情報:
 TOPICS 2005.10.12 日薬、「薬局機能評価マニュアル」を用いた自主点検の分析結果を公表

薬局機能評価-薬局経営が変わる!(調剤と情報 2006年4月号)

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