☆ コラム

  2012/12/8「解散総選挙、私たちの意思表示」


      師走のあわただしい中で衆議院選挙がはじまった。迷惑に思う方もいる
     かもしれない。しかし、私たち国民にとっては自らの意思表示をする貴重
     な機会である。三年三ヶ月、民主党は私たち国民との約束を裏切り続け、
     挙句の果てに選挙で約束していない消費税増税を決めてしまった。政治家
     とは言葉で国民に約束し、行動で判断してもらう立場といえる。しかし、
     今や政治家の約束ほど信用できないものはないと思っている国民も多いの
     ではないか。今度の選挙では国民が政治家の行動に対しどのような態度を
     示すか、それが試されている。
      まず忘れてはならない事、それはやはり民主党の裏切りと野田佳彦首相
     のウソである。インターネットにも流れているが、彼は2009年の総選挙に
     おいて「マニフェスト書いていることを命懸けでやる、書いていないこと
     はやらない、書いていないことを平気でやる、これっておかしいと思いま
     せんか」と言っていた。そして彼はその真逆のことをやった。しかし、多
     くの国民は既にそのようなことがあったことも忘れてしまっているのでは
     ないだろうか。実は、政治家は国民なんてその程度であることをよく知っ
     ている。「この選挙で負けたら政治家を辞める覚悟で戦っている」と言っ
     ておきながら次の選挙に出てきても、国民はもう過去のことなんて忘れて
     いる。だから、政治家はウソを繰り返しても政治家を続けていることがで
     きるのである。政治不信をつくったのは政治家だけの責任ではなく、政治
     家のウソを許してしまう私たち国民の側にもある。今回はマニフェスト型
     の選挙になったのに、また同じ過ちを繰り返すのか?それが試されている
     選挙でもある。
      あらためてマニフェストとは何か。マニフェストとは政治家(政党)が
     選挙において目標達成のための行程表や財源など、具体的な数値まで示し
     て国民に約束する“契約書”である。もし、政権与党がマニフェストで掲
     げた約束を果たしていなかったなら、その契約違反に対し次の選挙で国民
     が制裁を下す、それでマニフェストは完結するのである。今回のように消
     費税増税といった大きな案件については、なぜ必要なのかを説明して解散
     総選挙で国民に信を問うべきであった。もしも、今回の選挙で現職の首相
     をはじめ、歴代首相や大臣をことごとく落選させたなら、マニフェストは
     機能したことになる。マニフェストを完結させるためにも民主党には厳し
     い審判を下すべきである。特に野田首相の選挙区である千葉○区の有権者
     がどのような審判を下すのか、国民が国民主権にどれだけ目覚めたかを計
     る試金石ではないかと考えている。

      では自民党はどうであろうか。政権与党として経験のある自民党に回帰
     するするのもひとつの選択である。しかし、安倍総裁の主張をじっくり吟
     味してから決めるべきであろう。憲法改正や国防軍など、かなり右寄りの
     政策が目立っている。民主党がダメだから自民党といった消極的な選択で
     は後になって後悔するであろう。
      次に第三極といわれる選択肢はどうであろうか。民主党も自民党も嫌だ
     からだ第三極と考える人もいるかもしれない。この場合は、仮に民主党や
     自民党が第一党になり、過半数に達しないときに第三極はどうするのか、
     そこまで想像を働かしたほうがいい。民主党や自民党が嫌だから第三極に
     投票したのに、民主党や自民党と結びつくようでは、第三極に投票した意
     味がなくなるかもしれない。
      さて、第三極といわれる人たちはどうなのであろうか?現状がだめだか
     ら新しい勢力、といった論理は民主党でも聞いたし、それより以前では日
     本新党もあった。政策がバラバラな連中がただ単に数合わせを目的として
     集まるなら、それは烏合の衆に過ぎない。第三極の中心は日本維新の会で
     あろう。しかし、橋下大阪市長の主張は二転三転している。私が特に驚い
     たのは「政策よりも行動力、行政を動かす力だ」と主張していたことであ
     る。その真意は定かではないが、確かに政治家には官僚などの行政職員を
     動かす力量が求められる。しかし、どんなに優秀な官僚でも行き先がはっ
     きり定まっていなければ、その力を発揮することはできまい。その行き先
     こそ政治家が示すべき“政策”である。もし、行き先、目的といった政策
     なくして進むことを良しとするのであれば、それは単なる権力志向であり、
     国民を幸せにする政治ではなく、自らの権力欲を満たすための政治になっ
     てしまう。
      もうひとつ、注目すべき第三極は嘉田滋賀県知事率いる日本未来の党で
     あろう。卒原発という嘉田知事の持論を掲げ、公示直前に旗揚げをした。
     本当の脱原発推進を支持する国民の受け皿になる期待はある。しかし、政
     党としては政権を任せられる感じはしない。選挙後にある程度の勢力を得
     たとしても今回は政権には与せずに、卒原発の現実的な行程表づくりとと
     もに、党としての政策をしっかり固める道を選ぶべきであろう。

      今回は12もの政党が乱立し、どこかしら自分の考えを反映している政
     党があるかもしれない。しかし、どの候補者も信用できないし、どの政党
     も支持できないとしたら、どうすればいいか?まずは選挙に行き投票する、
     これは国民の権利であり義務ともいえよう。東日本大震災後の最初の国政
     選挙でもある。ぜひとも選挙には行って欲しい。
      自らの意思を示す選挙、特に推す候補者や政党がない場合、消去法で選
     ぶ方法も考えられる。しかし、私たちの生活は脱原発に賛成するとどうな
     るのか、TPPに参加するとどうなるのか、TPPは農業や工業だけでなく医療
     や保健、金融など多くの分野に関わっていることまで考える必要がある。
     賛成派と反対派の両方の意見に耳を傾け、できる限り自らも調べ、最後は
     自分で判断してほしい。決して上っ面の賛成論、反対論で決めないでもら
     いたい。
      それでも、選挙後に国民不在の離合集散があるかもしれない。だから政
     治家は全員信用できないと、投票する相手がいないとなったら、是非とも
     無効票を投じて欲しい。しばしば白票といわれるが、「誰もいない」とか
     「全員×」「適任者なし」など、自らの意思をハッキリ示した無効票の投
     票をお勧めする。仮に無効票が世論調査の「支持政党なし」と同じように、
     30%〜50%も占めるとこれは一大事になる。無効票が多くなっても政権与
     党は誕生する。しかし、無効票は国民の多数が政権与党を支持していない
     ことを明確に示すことになる。いや、野党も含めて支持していないという
     ことだ。また、無効票は棄権と違って政治に関心があることを示している。
     この無効票がどこに動くかは、政治家にとって大きな関心事なるはずであ
     る。結局今まで政治が変わらなかったことを考えると、政治不信を打破す
     る本当の力は、もしかしたら「適任者なし」といった無効票で自らの意思
     を表示する国民なのかもしれない。