☆ コラム

  2012/4/28「使えない学者とそれを持ち上げる
        マスコミの狙い」


      先日、あるウェブ上の記事を見て唖然とした。それは「日本の『統治』
     マニフェスト導入は誤りだった」という産経新聞の「正論」である。

      「災害銀座の日本と英国は違う」として、英国のマニフェストを導入し
     たことを誤りだったとするある大学先生の主張である。これを読んで感じ
     たことを率直に言えば、「使えない学者」ということだ。自然災害の多い
     日本では、あらかじめ政権公約を示すマニフェストは、3.11のような突発
     的な出来事に対応できないというのが、この大学先生の主張である。まず、
     この主張の大きな誤りは、民主党が掲げたムダ遣いをなくすための政策は、
     3.11とは無関係に、やればできたことであることを見過ごしている点だ。
     むしろ、東日本大震災で想定外の支出が生じたのだから、さらにムダ遣い
     をなくして財源を捻出するのが筋ではないか。地震や津波で住む家を無く
     した国民が大勢いるにもかかわらず、必要のない国家公務員宿舎の新規建
     設を(一時は)容認するなど、マニフェストとは全く無関係に、民主党政
     権が単に無能だっただけのことである。
      次に愚かな点は、自然災害の多い日本に、英国生まれのマニフェストは
     向いていないと、自然災害(地震)とマニフェストを結び付けている点で
     ある。自然災害(地震)に向いていないのは、マニフェストというよりは、
     むしろ原子力発電所ではないか。こんな小学生でもわかるようなことがわ
     からないのであるから、話にならない。
      また、マニフェストでは期限内に約束が達成できなかった場合、その説
     明責任が生じる。もし、民主党が今回の大震災後に、必要のない国家公務
     員宿舎建設を即刻中止し、国会議員の政党交付金返還から大幅な歳費削減、
     公務員給与も削減、それでも足りないので、マニフェストで約束した子ど
     も手当てなどの見直すと言ったとしても、おそらく多くの国民は民主党を
     支持したであろう。これが本来、民主党がやるべき説明責任だった。また、
     民主党はマニフェストで掲げたムダ遣いや天下りの根絶ができないことに
     対する説明責任も全く果たしていない。それだけならまだしも、マニフェ
     ストに書かれていないことを優先して実行しようとしている。国家の一大
     事だからこそ、まずは政治家が身を削り、それでも足りないので(マニフ
     ェストには書かれていない)増税をお願いしていたなら、これほどまでに
     国民の心が離れることはなかったであろう。マニフェストが突発的な出来
     事に対応できないとするのは、的はずれで浅はかな考えとしかいいようが
     ない。
      そして、最後にこの学者は自戒を述べているが、マニフェストに代わる
     ものを提案しているわけではない。自らの知識をひけらかしてはいるもの
     の、マニフェストの問題点を指摘しているだけで、代替案を示していない。
     これこそまさに「使えない学者」の典型である。

      さて、この記事を今度は斜めから眺めてみる。メディアリテラシーの視
     点でこの記事を見ると、発信したメディアが産経新聞であることに注目し
     たい。産経新聞は福島第一原発事故後も、原発推進の立場をとっている。
     自然災害(地震)と原発との結びつきから、世間の目をそらすために、的
     はずれな持論を展開する学者先生の記事を載せたと考えると合点がいく。
      地震国日本に向いていないのは、マニフェストか、それとも原子力発電
     所か?もし世論調査をしたなら、原子力発電所と答える国民が大多数を占
     めるであろう。福島第一原子力発電所の事故で、私たちは政府のウソやメ
     ディアのウソを見抜く力が少しはついてきた。しかし、国民を騙そうとす
     るメディア報道が尽きることはない。私たちはメディアの報道を、まずは
     疑うことから入るぐらいでちょうどいいと考え、接していくべきである。