☆ コラム

  2012/3/10「がれき処理と日本の“絆”」

      東北被災地のがれき処理が進まない。東日本大震災から1年が経とうと
     している段階で、岩手・宮城・福島3県で5%しか進んでいないという。
     がれきを日本全体で処理しようにも、放射能汚染の不安や処理能力の問題
     などから手を挙げる自治体も少ない。また、受け入れを表明している自治
     体でも、住民からの反対の声があがっている。
      安全な瓦礫のみを受け入れると言われても、住民が不安を感じてしまう
     のもわからなくはない。しかし、特に首都圏に住む人たちは、これまでに
     福島原発の恩恵を大いに受けてきたことを考えれば、そのことを棚にあげ
     て放射能への不安を盾にして反対するのは、あまりにも身勝手であると私
     は思う。もし、反対する住民が、今まで電気を使わない暮らしをしてきた
     のであれば、身勝手とは思わない。一歩譲って、震災前から原発反対運動
     をしてきたのであれば、納得することもできる。しかし、原発反対運動も
     せずに、電力という恩恵だけを受けてきたのであれば、恩恵と表裏一体の
     リスクも、甘んじて受け入れる覚悟を持つべきである。福島をはじめ、被
     災地の人たちだけにリスクを負わせることが“絆”だとは、私は思わない。
     それでも瓦礫の受け入れを拒否するのであれば、今から全く電力を使わな
     い生活をしたらどうであろうか。
      また、これまで原発安全神話をつくってきた政治家、官僚、東京電力、
     御用学者、そしてマスコミの罪も忘れてはならない。特に瓦礫の受け入れ
     を反対する人々は、その原因をつくったこれら原発ムラの住民に対して、
     責任を取ってもらうことを声を大にして訴えるべきである。今からでもで
     きる具体的な行動としては、原発推進の立場をとっている新聞の購読を即
     刻やめることである。私たち国民はこの連中にダマされ続けてきたのだ。
     現状では、彼らの誰も責任を取っていない。したがって、彼らにちゃんと
     罪を償わせること、そして、それを実行できる政治家を選ぶことが、私た
     ちがやるべきことである。

      さて、ここからは具体的な瓦礫の処理方法について少し述べてみたい。
     先日あるテレビ番組で(財)地球環境戦略研究機関国際生態学センターの
     宮脇昭先生が、非常に興味深い処理方法を紹介していた。瓦礫処理の基本
     は焼却して灰にすることであるが、先生のアイデアは、瓦礫を焼却せずに
     埋め立て、その上に地元の木(広葉樹)を植えるというものである。そし
     て、それを海岸線に沿って堤防のように盛り上げて作れば、津波の防波堤
     の役目にもなる。ポイントはその土地に昔から生息している広葉樹を使う
     ことだ。今回の津波でも松などの針葉樹の多くはなぎ倒されたが、広葉樹
     は根が深いため、なぎ倒されずに残ったものも多かったようである。宮脇
     先生が提案する方法を適用すると、瓦礫のすきまに根が広がり、瓦礫でで
     きた堤防を頑丈にするらしい。
      役所仕事は一端方法論が決まってしまうと、それを変えることは容易で
     はない。この場合は「瓦礫は焼却して埋め立て」という決まり事である。
     この方法ならば、地元で新たな雇用を創出することもできるであろう。な
     かなか進まない瓦礫処理の方法として、このような新しいアイデアの採用
     をぜひとも真剣に検討してもらいたい。