☆ コラム

  2012/1/19「福島第一原発事故を想定外とした
  
       構図に等しい事故収束宣言」

      野田首相は昨年12月16日に福島第一原発事故の収束宣言をしている。こ
     れについては、当初から批判が続出していた。私も首相の収束宣言には全
     く理解できないひとりである。誰ひとりとして炉心に立ち入ることすらで
     きない、言い換えれば事故の正確な状況を把握できていない段階で「収束
     宣言」はどう考えてもおかしなことである。
      15日(日)のNHKスペシャルで「シリーズ原発危機 知られざる放射能汚染
     〜海からの緊急報告〜」という番組を放送していた。これまで明らかにな
     っていなかった海洋や湖沼の放射能汚染に関する番組である。海洋汚染は
     福島第一原発周辺のみならず、銚子沖や東京湾にも汚染レベルの高いホッ
     トスポットの存在が確認されていた。このようなホットスポットは、汚染
     された泥や砂が集積される場所らしい。そして、汚染の度合いも今後数年
     にわたって上昇する可能性があるとのことであった。事故収束どころか、
     これから未知の放射能汚染に対応していかなければならないのである。原
     発事故直後、原子力保安院は海洋に放出された汚染水は拡散するから問題
     ないといった主旨の説明をしていた。これが全くのデタラメであったこと
     が、15日の放送を見てよくわかった。さらに、湖沼の放射能汚染も深刻で
     ある。番組では赤城山の大沼における汚染を紹介していたが、湖沼は集積
     した汚染土壌が外へ排出されにくいといった地形上の問題もあるらしい。
     チェルノブイリ事故では湖沼の汚染が長期間(十年以上)に渡っている。
     ひょうひょうと事故収束宣言をした野田首相に怒り心頭になった。

      あらためて野田首相の事故収束宣言を考えてみると、これはまさに臭い
     ものには蓋、みてみぬふりをして原発事故を想定外にしてしまった日本の
     原子力行政そのものであるといえる。太平洋戦争時も都合の悪い事実は伏
     せて、日本の勝利のみを伝えた大本営発表にも通じるものがある。野田首
     相の原発事故収束宣言は、大惨事を経験してもなお日本の中枢は全く学習
     能力がないことを証明している。
      では、どのようにしたら日本は原発事故と正面から向き合うことができ
     るのであろうか。まずは、国民を欺いている野田首相を、特に地元の支援
     者の方々が率先してその姿勢を批判し修正を求めることである。おそらく
     この収束宣言も官僚のシナリオに沿ってのことであろう。官僚がいなけれ
     ば仕事ができないと、官僚の言いなりになっているのが今の政府民主党で
     ある。しかし、有権者がそのような政治家を二度と選ばないほうが、彼ら
     にとってはもっと深刻な問題なのである。
      国政は国会議員にしか決めることはできないが、一般国民にとって不利
     益なことばかりやる国会議員を選んでいるのは私たち一般国民である。国
     民の中には、小泉元首相や橋下大阪市長のようなカリスマ的な政治家が、
     この国を変える力だと思っているひともいるであろう。しかし、カリスマ
     が出てこなくてもこの国を変えることはできるのである。野田首相のよう
     な国民を欺く政治家を、国民との契約であるマニフェストを次々と反故に
     する民主党議員を国会から退場させることこそが、この国を変える原動力
     になるのである。たとえそれが親類や友人であっても。