☆ コラム

  2004/11/01「新潟県中越地震をうけて
          −地震予知は可能か−」


    10月23日に発生した新潟県中越地震は、30人以上の犠牲者を出し、今なお多く
   の方々が避難生活をおくる悲惨な結果になってしまった。犠牲者のご冥福をお祈り
   しますとともに、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

    さて、今回はあえて“地震予知”について、触れてみたいと思う。

    この新潟県中越地震を事前に予知したと言っている人もいるようだが、実際に人
   命を救ったり、被害の軽減にはつながっていないので、役に立っていないことだけ
   は事実である。また、当たったと豪語している方のほとんどは、ほぼ日常的に地震
   が起きると言っている。このような“まやかし”に騙されないよう気をつけなけれ
   ばならない。
    現時点において科学的な地震予知は不可能である。しかし、電磁気的アプローチ
   などによる新しい研究成果は、その可能性を示していると言えよう。しかし、その
   ような研究が進み、もし将来的に地震予知がある程度可能になったとしても、それ
   が本当に役に立つかどうかは大いに疑問が残る。
    法律で唯一、予知を許されているのが東海地震である。観測に異常が検出され、
   高速道路や新幹線を止めるなど、さまざまな経済活動をストップさせた場合、その
   損失は一日で7,200億円以上との試算もある。もし発生しなければ、損害賠償
   も考えられないことではない。果たして、このような絶対とはいえない情報に対し
   て、政府は危険を冒すであろうか。それは、そのときの首相の政治決断に委ねられ
   る。

    科学的に地震予知がある程度可能になったとしても、社会がそれを受け入れられ
   るかどうかはまた別の問題である。過去に中国などでは、地震予知によって多くの
   人命が救われた事例がある。予知が被害軽減につながることは、まぎれもない事実
   だ。しかし、絶対でない情報に対してそれをどう扱えばいいのか、その準備と覚悟
   ができている人は、いったいどれくらいいるであろうか。科学的な予知と社会的な
   予知は別物である。政治はこの点を十分理解した上で対応しなければならない。