第 6 章

成人後の肉体機能の残存率





 図の左側で、まず、鎖線→2O(はたち)前後までの体の、この急成長振りを見て下さい。これとまだ未熟な意志力とのアンバランスが、若者を無軌道に走らせる…。
 しかし「鬼も十八、番茶も出花・ナスは漬け頃、娘は見頃」で、体の美しさは最高となる…娘をヌードにすれば、みんな宮沢りえと同じです。しかし花の命は短くて、2O過ぎれば体の各部の機能は、ほぼ直線的に低下→老化して行き、中でも手足の筋力、肺活量の減少などは最も早い…。これは病気ではなく、いわゆる老化であって、遺伝子情報による生理現象ですが、その遺伝子に傷がついて行くからです。その有力な原因の一つとして最近活性酸素=酸素毒が注目されて来ました。
 地球上の元素は1O9ありますが、その全量の46%を占めるのは酸素です。私たちは四、六時中酸素を吸いますが、その中に紫外線からエネルギーをもらって、酸化力が特に強くなる約2%の活性酸素があり、これがジワジワと遺伝子に傷をつける→酸素が金属を錆させ、食物を腐らせるように…。人参、カボチャ、サバ、イワシのように、色のついた食物がよいというのは、その中の色素が、酸素毒を中和する能力が高いからです。
 こうして発育の項点=成人を過ぎると遺伝子が弱ってきて、いろいろの病気に対する各部の抵抗力が減り、いわゆる成人病にかかる…すべての生物はこうして一生を終えるのですが、死に方には違いがあります。例えばサケは成魚になって生れた河を上り、雌の産卵、雄の放精が終ると、すぐその場で死ぬ…。受精卵は親の保護や子育てが要らないからですが、哺乳動物の人間は、子供が成人するまで長期の養育が要りますから、長命でなければなりません。動物ごとに、こういうプログラムが遺伝子情報として組込まれていて、それぞれ寿命が決ってきます。ネズミは3年、イヌは20年、チンパンジーは約45年です。
 人類の次代の発展を担う者は、夫婦合作による、両親とは違う適応力を持つ新しい遺伝子からなる子供として、新陳代謝・輪廻(りんね)転生して復活するのであって、「生者必滅・会者(えしゃ)常離」→選手交代…これが自然であり、摂理→神の設計です。
 これは誰でも理性では分かっている…。しかし感情では第3章の図のように、誰も自分だけでは死にたくない…この理性と感情の間(はざま)において、人間だけが喜怒哀楽に振り回される運命を背負っているのです。この煩悩(ぼんのう)消滅の心境が仏教でいう涅槃(ねはん)であり、諦観(たいかん)です。



第7章 創造への道は一筋

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