第 1 章

脳の進化と文化の進歩
 (evolution)   (advancement)





 近年遺伝子の研究が急速に進み、われわれ人間の直接の祖先はチンパンジーであること、これから分岐して直立猿人に進化したのは、200万年前のことだといいます。それから今日まで、人間の脳の目方の進化増大と、それが創り出した機械文明と精神文化の進歩の関係を、動物学と人類学の本の中のデータを使って図に表わしますと、上図のようになりました。
 火をおこして、その熱エネルギーを利用し始めた37万年前の北京原人…これは人間の生活を、他の動物から断然引き離して向上させた革命的進歩ですが、同時に自然破壊の出発点ともなりました。北京の南西75km、周口店の洞窟の中に炭灰がありましたが、40数体の化石人骨の壊れ方から見て、共食いをしていた形跡が見られるといいます。
 次にドイツのネアンデルタール谷で発見された人骨は、ネアンデルタール人と呼ばれますが、彼等はここで墓を作り始めました。現代人の脳は約1,400グラムですが、10万年前の彼等の脳が1,200グラム程度であった時代です。その後ネアンデルタール人の墓は、いくつも発見されましたが、彼らは洞窟の中に死体を埋め、近くに咲いている花を供えたのです。骨の化石と花の種の化石が一緒に発見されました。墓を作る…恐らく仲間の死への哀惜の情からでしょうが、死の自覚から喜怒哀楽→死哀生歓という感情の発生→これこそが、人間の精神文化の出発点といってよく、文明も文化も悉く、この死からの脱出願望への苦闘であって、火の利用と共に、人間が動物から完全に離脱した基点ともいえます。地球上3,552種類の哺乳動物の内で、墓を作って礼拝するのは人間だけですから…。
 更に時は進み、1868年(明治元年)、フランス南西部のクロマニオン岩窟で発見された、4万年前のクロマニオン人の絵画…彼らはその岩壁に見事な動物などの壁画を残しました。彼らの狩猟の目標でしたから…。
 そして5,000年前、アラブ人は粘土板の上に、葦の茎で書く楔(くさび)形文字を発明…。これから自分の意志や知識を子孫に伝承することが可能になりました。
 われわれ現代人の文明で、この20世紀最大の業績は、学者のアンケートによりますと、原子エネルギーの解放と月面着陸となっています。



第2章 右脳と左脳 → 揺れる心

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