◆百人一首競技かるた入門
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百人一首かるたと聞くと、和歌を聞いて優雅に札を取り合う「みやびな遊び」と思われる方が多いのではないでしょうか。「お座敷かるた」レベルではたしかにそうかもしれませんが、「競技かるた」は百分の一秒のスピードを競い、まれに打撲や骨折なども伴うという、まさに畳の上の「格闘技」ともいえるスポーツです。最初からおどかしてしまいましたが、札の覚え方やコツを覚えると、初心者から楽しめる競技でもあります。中高年になってから始められる方もたくさんいます。
昨今の「脳ブーム」で、書店にはたくさんの「能力開発」の本が並んでいます。それらの本によると、脳の「前頭前野」という部分が活性化することが重要だそうです。認知症の方は、ずっと以前のことは覚えているのに、ちょっと前のことが覚えられないという傾向があります。これは短期の一時的な記憶(ワーキング・メモリー)を司る、「前頭前野」の部分が衰えてしまっているからです。さらに「前頭前野」には、行動を抑止する機能もありますから、「前頭前野」が発達すると「キレる」ということが少なくなります。まさにこの「前頭前野」の機能を多く使うのが「百人一首競技かるた」です。「ワーキング・メモリー」、「情報処理能力」、「集中力」「精神力」で競われる、このすばらしいゲームにぜひ挑戦してみてください。
対戦者がお互いに向き合って正座し、一礼します。札を裏返しにしてよく混ぜ、25枚ずつ取ります。残りの50枚は使用しません。各25枚ずつの持ち札を左右87cm以内に3段に並べます。並べ終わったら15分の記憶時間に並べた札の位置を覚えます。記憶時間最後の2分間は手の素振りをしてもかまいません。暗記時間が終了したら、相手に一礼、読手に一礼したあと、競技が始まります。競技が始まったらお互いに読まれた札を取り合い、先に持ち札がなくなった方の勝ちです。
札の取り方やお手つきの説明などは こちら をご覧ください。
(社団法人全日本かるた協会の「HOW TO PLAYかるた」のページ)
競技かるたで使われる用語の中から、主なものをいくつか紹介します。
「序歌」
競技の最初に読み上げる歌で、百人一首に含まれない歌です。普通は「難波津に咲くやこの花冬ごもり 今を春べと咲くやこの花」という歌を使います。九州の太宰府天満宮で開催される大会では、当地にゆかりの菅原道真が詠んだ「こち吹かば匂いおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」が序歌として読まれます。
「から札」
その対戦で使われない50枚の札のこと。から札が読まれたときに場にある札にさわってしまうと「お手つき」となります。
「出札」(でふだ)
場にある札が読まれたとき、その読まれた札のこと。
「きまり」
きまり字のこと。きまり字とは、上の句のここまで聞けばどの札か決まるというもの。最短1字から最長6字まであります。
「とも札」
きまり字が途中まで一緒の札。「あきのたの」と「あきかぜに」、「つきみれば」と「つくばねの」など。
「むすめふさほせ」
最初からきまり字が1字の札7枚の総称。「むらさめの」「すみのえの」「めぐりあひて」「ふくからに」「さびしさに」「ほととぎす」「せをはやみ」の7枚は最初の1字を聞けば取ることができます。
「お手つき」
次のような場合、お手つきとなります。
1 出札が自陣にあるときに、相手陣の札をさわってしまう。
2 出札が相手陣にあるときに、自陣の札をさわってしまう。
3 から札のときに、自陣あるいは相手陣の札にさわってしまう。
相手がお手つきをすると、自陣の札を1枚、相手に送ることができます。
※出札がある側の札は、どの札をさわってもお手つきにはなりません。
「送り」
相手陣の札を取ったとき、または相手がお手つきをしたときに、自陣の札を一枚相手に送ること。送る札は自陣から任意に選んで送ることができます。受け取った側は好きな位置にこの札を置くことができます。
「ダブル」(ダブ)
出札が相手陣にあるとき、自分が相手陣の出札を取り、相手がこちらの陣の札に触れるお手つきをすること。この場合は一度に2枚送ることができます。
から札が読まれたときに、自陣と相手陣、両方の札にさわってしまったときは「カラダブ」(から札のダブルという意味)といって、お手つきをしていない方が、一度に2枚送れます。
また、自陣の札を取り、相手がお手つきをした場合には、自陣の札が1枚減り、その上にお手つきで札を送ることができるので、枚数差はダブルと同じになります。これを「セミダブル」(セミダブ)といいます。
「大山札」(おおやまふだと読みます)
きまり字が6文字の札。3種類が2枚ずつ、計6枚あります。「あさぼらけ」「きみがため」「わたのはら」で始まる札は、次の1字を聞くまで取れなません。一方の札が読まれるか、あるいは片方の陣に2枚ある場合には「きみ」「わた」で取れます。「あさぼらけ」は「あさぢふの」という札があるので、「あさぼ」まで聞かなければなりません。
「運命戦」
残りの札が自陣・相手陣ともに1枚ずつになった試合のこと。
明治37年(1904)に新聞「萬朝報」を主宰する黒岩涙香(1862〜1920)が東京かるた会を創設し、同年の2月11日に日本橋常磐木倶楽部において第一回のかるた大会を開催したのが、競技かるたの始まりであると言われています。その後、戦前の軍国主義化による恋歌の禁止、戦争中の中断、戦後は使用する札の対立などの紆余曲折を経て、昭和29年に全日本かるた協会が設立されます。名人位戦やクイーン位戦を開催するなどして発展し、全日本かるた協会は平成八年(1996)に社団法人の認可がおりるまでに至りました。日本文化が改めて見直されている昨今、その競技人口は全国各地で確実に増え続けています。
毎年一月に滋賀県の近江神宮で名人位(男性)とクイーン位(女性)をかけた決定戦が行われます。名人戦は五番勝負(先に三勝したほうが勝ち)、クイーン戦は三番勝負(先に二勝したほうが勝ち)で、前年の名人・クイーンと予選を勝ち抜いた挑戦者との間で争われます。
平成17年の対戦では、名人戦は西郷直樹名人が8連覇を果たし、クイーン戦では史上最年少(当時中学3年生)でクイーン位についた楠木早紀さんが挑戦者の上野玲七段に勝って初防衛を果たしています。
今年(平成18年)は、名人戦五度目の対戦となる福井の土田雅七段、楠木クイーンには大阪の鋤納麻衣子六段が挑みます。
西郷名人の9連覇か、土田挑戦者の悲願が叶うか、また名人の連勝記録(27連勝中)がどこまで伸びるかも注目です。
2008年名人戦・クイーン戦はNHK・BS2で生中継されます。
放送予定:
平成18年1月6日(土)
13:30〜18:00(近江神宮・勧学館から生中継)
22:55〜23:10(ダイジェスト)